山田耕筰をうたう Ⅰ 電話 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

山田耕筰のうたをどうぞ。



    電話              川路柳虹


ちりりん、りん、

南の国から電話です、――

黄(きい)ろなお蜜柑なりました。

椿の花もさきました、

ストーヴ消して、外に出て

野はらの草に坐(すわ)りませう

――もし、もし、そちらはどなたです、

――はい、はい、わたしは遠方(ゑんぽう)の

東の風と申します、

わたしの可愛いゝ愛娘(まなむすめ)-

鶯がもうぢきまゐります。

さよなら、さよなら、

ちりりん、りん。 


             『鸚鵡の唄』川路柳虹 新潮社(大正15年刊)