山田耕筰のうたをどうぞ。
電話 川路柳虹
ちりりん、りん、
南の国から電話です、――
黄(きい)ろなお蜜柑なりました。
椿の花もさきました、
ストーヴ消して、外に出て
野はらの草に坐(すわ)りませう
――もし、もし、そちらはどなたです、
――はい、はい、わたしは遠方(ゑんぽう)の
東の風と申します、
わたしの可愛いゝ愛娘(まなむすめ)-
鶯がもうぢきまゐります。
さよなら、さよなら、
ちりりん、りん。
『鸚鵡の唄』川路柳虹 新潮社(大正15年刊)