前回までのあらすじ。
JFKに小説を書いてみないかと依頼されたヤバオ。ネットカフェに篭って仮仮
誌に原稿を送ったが、まったく連絡がない。と思ってたら着信アリ。


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着信に対応できる場所ではなかった。

かつて「だんご三兄弟」を生み出した佐藤雅彦は毎日新聞で連載していた「毎月
新聞」にて携帯電話の恐ろしさを1999年5月19日の毎日新聞で「新しい心
配」と言い表した。クラッシックコンサートに出かけた著者がやたらと盛り上が
ってる会場に、なんだろうと回りを見渡したら、2階席に皇太子夫妻が着席して
いた。「ここで誰かの携帯が鳴ったらどうしよう」数年前であれば心配する必要
のなかった種類の心配で、これを「新しい心配」と名付けた。
と。それから10年たっている。友人と居酒屋で飲んでて実家の親から電話が掛
かってくるという違和感にも慣れた。モーニング娘。という言葉の違和感どころ
か、携帯で「モーニング」を入力するだけの変換予測で「。」もきちんと入った
モーニング娘。が候補として出てくる。新しい心配すら古くなっている。そんな時代だ。
そんな最先端の過去をぶら下げながら、仮仮誌からの着信。場所が悪すぎた。

近所のDramaという銀皿を貸し出して肌色と目がチカチカする画が動き出すブツを
貸してくれるコーナーにいた。

「はい」

「仮仮誌の田生ですが、今お時間大丈夫ですか?」

まったく大丈夫じゃないよ。僕は天使じゃないよ。
「はぁい」

「今お店ですか?」

「いえ、違うんですよ」

「近日中に赤入れしたいんですが、時間ありますか」

「はい、大丈夫ですよ」

「いつ頃がいいですか?」

「いつでも大丈夫ですよ」

ヤバオのやり取りをおさらいしてほしい。ヤバオの声は受話器の向こうの田生さ
んには発していない。アダルトコーナーの他の客に対して言ってるようなものだ。
こんな場所でまともに会話出来る方がおかしい。

New心配ofNew心配のおかげで借りたいブツも借りずに帰宅。
とにかく縛り地蔵憧れで今は小説を書かないといけない。

毎回やり取りしている友人が「こんな感じにまとめたらいいんじゃない」という
サンプルという名のゴーストライティングして頂いた原稿によく似たサンプルを
送ってくれた。

個性だの、俺だけのだの、いろいろとあるかも知れん。ただ、面倒臭いし、この
サンプルでいいんじゃねぇ?

誰だ?誰か今悪魔っぽい囁きしたな!

俺でーす。

ゴースト文章をチョロ変えしたのを仮仮誌の田生さんに送った。

これはまとまってるでしょ。おそらく。

本日赤入れ。いつものように店を開けるが、近頃めっきり友人知人から「小説進
んでる?」と聞かれる。ブログをみんな読んでくれてるんだなぁと嬉しい&プレ
ッシャー。今夜田生さんがやってくる。「赤入れ」って何だろう?二色刷りって
事じゃないでしょ。昭和35年に発行された俺の宝物「印刷ユーザーガイド」を
めくる。この本は当時の様々な印刷技術サンプルの本で活版印刷やオフセット、
グラビア、投票券、小切手、クリスマスカード等のサンプルが入りこんだ意図し
ないコラージュ本だ。この本の付録10ページに「校正記号表」というのがある。

「文字、記号などを取り去って、あとを詰める」これを「トル」というらしい。
その他にも「トルツメ」「イキ」「ミン」
「ポ」「倍」「アンチ」「小キャップ」などまったく意味がわからない事だらけ
だが、この文字だけが手書きの「赤」で書かれているから、おそらく今日はこれ
をやるんだろう。とにかく知ったかぶりをするに限るな。直ぐさま付録10を切
り抜いて練習。「トルツメ、アキでアンチ入れてポで」いいねぇ、「倍で分をミ
ンにした部分をオモテにしてイキにしたとこトルエンで」いけるっしょ。中笑い
はとれるんじゃないの?たまたま店にきていたまくち書房の口井さんに披露した
ら「絶対ウケる」という太鼓判と校正表が古すぎるから「アンチ」や「小キャッ
プ」は通用しないと思うから要注意と。

田生さんは深夜にやってくるが、ここで忘れちゃいけないのが酒を飲んだら終わ
り。ということ。飲みまくって眠って不義理してしまったのだから、待ち合わせ
場所をどうにかノンアルスポットにしておきたい。
「ファミレスにしませんか」というヤバオの提案に田生さんは「高円寺にファミ
レスありましたっけ」というまともな返しに対して「ありません」と答えて中華
居酒屋へ入る。

酒だけはまずい。飲んだら終わり。限界破滅ギグの蓋が開く。セーブしようと素
人の乱セピアのマスターNORANEROが最も嫌がる空気を読まない行為「飲
み屋に入って定食を注文する奴」になって定食を注文しようとしたら「一杯くら
いいいじゃないですか」という田生天使の声が!
甘えていいのか?寝ないのか?いや、駄目だ。ここで飲んだら一杯が二杯になっ
てしまう。止まるわけがない。相手は中華だぞ、甘くみるな。ここは冷静になろう。

「すいません生二つ」

やっちゃったよ。乾杯。

うまいねぇ。ダメだよ危険だよ。
また田生さんがピータン、麻婆豆腐、から揚げ、豚足スープとかギャンギャンに
頼むんだよ。ビールなんてあっという間にオケラ節よ。オカワリもらおうかな。
いや、ちょっと待てよ、まだ原稿すら見てないよ。とりあえず「ウーロン茶下さ
い」いいねぇ、きっと店員もこの感じを読み取ってるでしょ。こんだけの相性のいい
つまみに対してウーロン茶頼むナンセンス=チョロット焼酎入れておきますよ。と
いうサインでしょ。ビール→ウーロン茶。こんなナンセンスはないわけだから店
員の気遣いに期待。
「オマタセシマシタウーロンチャデス」

ウーロン茶だった。気遣いゼロだった。

飲みたいのみたい気分を抑えながら食べる。
飲むはウーロン茶。中華とウーロン茶がまた相性いいんだ。
でもようぅ!呑みてぇ、飲みてぇ。

「いろいろあるんですが、まずは見てください」
プリントアウトされた原稿を渡される。
レイプに次ぐレイプ。
赤、赤、赤。
パイロット、ぺんてる、パーカー、ボールペン会社すべて集まっても
こんな赤は出せないんじゃないかって位、赤い。
かなりの大枠で囲んで「トル」と書かれてる。
「トル」!!ワァオ!メジャー!と思ったのは最初だけで、出てくる出てくる
「トル」ラッシュ。そしてたくさんの赤字で書かれた「?」マーク。
落ち込んで下を向いてもテーブルの角しか見えないので、
手首を当てて、スッーとスライドさせて見せる自殺を考えるが、却下。

「ここの描写はまったく意味がわからないんですけど」

あっ、これはまず鍵持って開けますよね、そんでバーンってやって、
そんで、シカトしながら、入ってバンってやってブーンってなるんすよ、

「なるほど、でもこれじゃぁまったくわからないですね」

と、の、ほの、とほほでやんす。

その後も何度も身体を使って説明して、「言われないとわからない」
と言われ、レイプされまくりで、逃げ出したい&諦めたいスイッチが入る。

校正記号が書かれた紙を取り出して、どうにか、
「イキ」ですかね?「小キャップでポにしましょうか?」などという愚の骨頂ギグ
をやるが、
「何を見てるんですか?」
と言われ、待ってましたといわんばかりに、紙を渡すが中笑いどころか、
小、5笑いの薄瞬き笑い程度に終わる。
レイプされて自殺もなしじゃないな、その後も、
「このあたりだけ文体がちがいますよね」
という鋭い指摘をされて、
「そりゃぁー、そうっすよ俺じゃない人間がそこ書いてますからねぇ」
とは言えず、どうしようかなぁー、と思ってたら、
やっぱレイプされた後っておかしくなるんすかね、言ちゃったんすよ、
「実はチョロっと書いてもらったんすよ」
「やっぱり」
バレるんですね。
3月6日の宮沢章夫さんとのトークイベントのチラシを渡して、店を出る。
「じゃぁ、明後日までに原稿の直しよろしくお願いします」
と言って帰り始めたので、サラリーマン文筆家の精神が分泌してきたので、
同じ方向に歩く。
「どうしたんですか?帰る方向逆じゃないですか? 」

「何言ってんすか、舎弟じゃないですか、見送ります」

「いや、いいですよ、じゃぁ飲みにいきますか」

もう午前三時を回ってる、飲みたい、、、いや、試されてる。

「いや、今日は、、やめておきます」

明後日は新宿で宮沢章夫、松本哉、ヤバオ、三人トークイベント。
呑まないわけがない。明日までに原稿を書き直さなければ。

つづく


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いよいよ3月26日に仮仮誌ことen-TAXI(エンタクシー)が発売されます。
福田和也氏に「小説書いてみませんか」と言われビビりまくって書いた超短編
小説がどうやら掲載される模様です。
それを記念してものチョロいイベントを開催します。

●4月4日(土曜)
素人の乱12号店(高円寺、シランプリの斜め前)
18時から20時くらいまで。
入場料は未定ですが500円以下なのは保証します。
無料の可能性アリ。

エンタクシーを調子に乗って50冊買い取ったので、そこで販売いたします。
980円
ここで売ってるエンタクシーは本屋に売ってるのとは違うバージョンで、
表紙と裏表紙に仕掛けがあって、
表紙を変えて違うものにして、そこにマジックテープが貼ってあり、
その上には「小説依頼が来た」VOL9までの完全版と
裏表紙のエンタクシーにも同じくマジックテープが貼ってあり、
「ネタバレ完全自供ガイド」が付いてきます。
「小説依頼が来た」を読んで本編の小説を読んだ後にさらに
「ネタバレガイド」でそういうことだったのかー。が味わえるブツに
なっておりまして、完全特殊パッケージになっております。
そんなこと言われても遠くて行けないよ!
という方には郵送するので、メールにてお知らせ下さい。
「小説依頼が来た」完全版はどなた様にも無料で郵送するのでお知らせ下さい。

近所でエンタクシー買うから「ネタバレガイド送ってくれ」という方に朗報です。
「ネタバレガイドは非常にデリケートな材質で出来ておりまして、リンク不可の無断掲載すんません、という
内容になっておりますので、「エンタクシーを持った自分」の写メをメール貼り付けて、
名前&住所と小説を読んだ感想を書いて送って下されば、こっそりと飛脚憧れの民営化に送らせます。
なお、いただいた写メは個人情報のルールに従わずネットに大公開するので、顔バレNGの方はエンタクで
顔を隠すなどの方法で写メを送っていただければ幸いでございます。

bashop77アットyahoo.co.jp
アット=@
お電話090-6044-0140
山下陽光

では、皿バイ