FA宣言していた横浜の内川聖一がソフトバンクへの移籍を決めた。大分出身の内川は「ぼく自身が九州出身。子どものころはダイエー(ホークス)が一番強いときだった」と、地元の球団への愛着を語った。大分にいる家族に、自分のプレイを生で見てもらいたい気持ちも強かったようだ。ソフトバンク王貞治会長じきじきの入団要請も心を動かした。
希望がかなってなによりだが、内川の移籍はひとりの選手の移籍にとどまらず、今後の野球界の方向、流れを考える、重要な節目になりそうだ。
昨シーズンまでにFAで移籍した選手は66人いるが、内川のようにセ→パの移籍はわずか6人しかいない。古い順に名前をあげると松永浩美(阪神→ダイエー)、仲田幸司(阪神→ロッテ)、稲葉篤紀(ヤクルト→日本ハム)、小久保裕紀(巨人→ダイエー)、石井一久(ヤクルト→西武)、中村紀洋(中日→楽天)の6人である。
数が少ないうえに、みな多少の注釈がつくような移籍だ。稲葉はメジャー行きが第一志望だったが、獲得球団がなく、日本ハムに「拾われた」形だ。小久保は無償トレードで出ていたのが里帰りしたようなもの。最初から「お約束」の古巣復帰だった。あとの選手は、すでに全盛期を過ぎていて、古巣チームにとって戦力的な打撃はほとんどなかった。
だが、内川は違う。3年連続3割を打ち、08年には首位打者を獲得。09年に行なわれたWBCでも存在感を示した。一塁も外野も守れる。ただでさえ駒不足の横浜にとって、絶対に欠かせない選手である。
実力はありながら、待遇面で不満のあるパ・リーグの主力選手が権利を行使してセ・リーグの人気球団に移籍するというのがこれまでのFA移籍の主流だとすると、内川のケースは全く逆をいく形である。
内川の移籍の特徴を整理してみる。まず、これまでFAの大口受け入れ先だった巨人、阪神が手をあげなかったこと。かならずしもポジションが空いているわけではないソフトバンクがそれでも獲得に乗り出したこと。そしてソフトバンクが前例のない破格の変動契約(出来高で最高4年13億6000万円)を提示したこと。
巨人、阪神が獲得に乗り出さなかったのはチーム事情によるものだろう。しかし、従来なら、巨人、阪神がやるような余剰戦力とも思える選手の獲得、高額契約などはソフトバンクのチーム強化にかける積極的な姿勢を示すものだ。
ソフトバンクは内川の他にも、西武から細川亨をFAで獲得し、オリックスとの契約が切れたアレックス・カブレラの獲得も噂されている。多村仁志、小久保裕紀、松中信彦、オーティスに内川、カブレラが加わった打線の破壊力は想像するだけで楽しい。
ソフトバンクに限らず、今年のオフはパ・リーグの積極姿勢が目立つ。楽天は星野仙一新監督のもと、メジャーから松井稼頭央、岩村明憲を獲得。オリックスもカブレラの後釜として巨人と契約の切れたイ・スンヨプを獲得した。
さらに近年のドラフトを見ると、パ・リーグの優位は誰の目にも明らかだ。2004年のダルビッシュ有にはじまり、涌井秀章、田中将大、中田翔などの高校野球のスターが軒並みパ・リーグの球団に入り、来季はあの斎藤佑樹と、実力では斎藤をしのぐといわれる大石達也もやってくる。この勢いがリーグ全体の積極姿勢につながっている。
「人気のセ、実力のパ」などという言葉は、今のパ・リーグのフロント、選手にとっては死語に等しい。人気も実力もこっちだ。そんな強気の姿勢が、内川のような実力派の選手を躊躇(ちゅうちょ)なく獲得する積極策につながっているのだろう。パ→セの流れがセ→パに変わる時代の、今回は先駆けではないだろうか。
阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
※この記事の著作権は、ヤフー株式会社または配信元に帰属します
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101207-00000302-sportiva-base頑張っている我が子を本気で応援したい?
プロのピッチングチェックでお父さんも一流のコーチになれます。