下校時間


部活動紹介で「喧嘩部」が紹介されなかったことに思いのほかがっかりしながら、いやそんなことは最初から分かっていたのだけど、でも心のどこかヒダ的なところに淡い期待をはさんでいたわけで・・・・・などとくどくど言う必要もないか、というわけでがっかりしながら家路を急いだ。


ワンワンワン


ドーベルマンが一匹ついてくる。


うん?


ワンワンワン


あ、こいつは元ボスだ。


なぜ分かったって?


質問してない?


あ、そ。


でも構わずに言うけど、それは右片方の耳がちぎれているからだ。


あとゴールドの首輪をしている。


ま、ボスだと認識した理由なんて認識した今となってはどっちが先だったのかなんて分からない。


それが普通だと思う。


ドーベルマンは封建時代の良妻のように僕の三歩後ろを謙虚についてくる。


面倒なのでこいつに名前をつけよう。


名前をつけるということは他の何かと識別するためであり、識別するということはその対象物を誰かに説明するときの労力を減らすことと同じベクトルにある。


とりあえず名前を言っとけば、言われた相手はなんとなくその対象物を理解した気になる。


名前なんて単なる記号なのにもかかわらずにだ。


意味なんてない。


さらに犬にとっては自分の名前を本人が、ここは本犬というべきか、自覚してるかどうかも怪しい。


ま、いいや。


おそらく部下となる他の14匹の犬と区別するために名前をつけてやろう。


ということで僕はこのドーベルマンに以下の名前をつけてやった。


ドッグ


ああ、そのままさ。


命名というものは本来は輪っかを小さくする作業だが、今回はドーベルマンという犬種より輪を広げてみた。


画期的な知的実験だと思う。


僕は得意気になって帰宅した。


ドッグはうちの庭でお座りをしている。


今夜の夕食の唐揚げを一つあげた。


ものすごくがっついていた。


さて、そろそろ僕も喧嘩をしなければならない。


じゃないと僕の物語を誰も読まなくなってしまう。


死んだ後に僕の自伝に誰も興味を示さないなんて辛すぎるじゃないか。


ドッグに里芋をあげた。


以外にもがっついた。


ドッグにキュウリをあげた。


見向きもしない。


父がドッグに気づいた。


キュウリに蜂蜜を縫ってドッグに食わせようとしてる。


見向きもしない。


父は何か大きな勘違いをしてるようだ。


こういうときは自分の父親を殴ってもいいのだろうか。