今回は8大会連続でオリンピック出場を果たし、1984年ロサンゼルスオリンピック以来37年ぶりとなる金メダルを目指す稲葉篤紀監督率いる「侍ジャパン」、日本代表について紹介します。
出場選手一覧
【寸評】
2019年の第2回プレミア12の出場メンバーを中心に、台頭する若手や国際大会での経験を豊富に持つ選手を選出した。
まずは投手陣。先発陣は複数の報道を考えると、3名が浮上している。
28日のドミニカ共和国との開幕戦は山本由伸が確実。オリックスのエースとして9勝、防御率1.82はリーグ断トツ1位。抜群の安定感に託した形だ。
31日のメキシコ戦には、森下暢仁が有力。今季は6勝、防御率2.29はリーグ2位。また高校、大学で日本代表を経験していると事も高い期待を寄せられている。
決勝トーナメントはグループリーグの1位、2位、3位によって日程が変わるが、1位は8月2日、2位、3位は8月1日が初戦となる。
決勝トーナメントの開幕戦は、日米両球界で実績を残している田中将大が有力だ。今季4勝、防御率2.86。今代表では唯一08年の北京五輪を知る存在であり、国際大会の厳しさを知るエースが決勝トーナメント初戦を担うとみられる。
以降は日程によって登板間隔が変わってくるが、4人目の先発候補と見られるのが昨年の沢村賞左腕大野雄大。今季は3勝と勝ち星には恵まれていないが、プレミア12を経験するなど稲葉監督からの信頼は厚い。
中継ぎ陣は、豊富な人材で枚数を揃えた。
17年WBCで圧巻の投球を披露した千賀滉大、7勝を挙げ、大学代表では守護神を担った伊藤大海。また過去の代表でも重宝された変則枠には今季防御率1.79でリーグトップを走る青柳晃洋が担う。
そして試合終盤を締める勝利の方程式は4人のリリーフが座る。
今季22ホールドを挙げた岩崎優、今季18ホールドを記録する山﨑康晃が7回を任される見通し。
8回には今季開幕から39試合連続無失点の新記録を達成し、西武の絶対的守護神を担う平良海馬。
そして守護神にはルーキーながら今季18セーブを挙げ、大学、社会人で国際大会を経験している栗林良吏が有力。
野手陣は、稲葉監督が就任時から掲げている「点を取る」を意識した選出となった。
長打力という部分においては、キャリアで30本塁打以上を放った選手が山田哲人、浅村栄斗、坂本勇人、村上宗隆、柳田悠岐、鈴木誠也が選出。キャリア最多が29本塁打の吉田正尚もいることを踏まえれば、強力な打線を形成する事が可能となった。
ただ長打に偏るわけではなく、菊池涼介や源田壮亮といったスピード感にあふれる選手、また2年連続最高出塁率の近藤健介、外野、三塁、一塁、捕手をこなせる栗原陵矢を選出。
また扇の要と言える捕手には甲斐拓也、梅野隆太郎を選出した。
稲葉監督は就任当初から「スピードだけでもパワーだけでもダメ。両方を兼ね備えたチームを作りたい」と発言。これまで「日本=スモールベースボール」という固定概念を覆したいという姿勢を見せている。
実際過去の国際大会では一振りによって窮地を脱した事もあれば、一振りによって致命傷を負ったという歴史を五輪やWBCで経験した稲葉監督だからこそ「スピードとパワーの両立」を掲げ、そしてそれに応えれる選手たちが揃ったというのが今代表の顔ぶれと言えそうだ。
プロ解禁後一度も金メダルがないという歴史に終止符を打ち、母国開催の五輪で金メダルを獲得出来れば、日本球界にとって大きな力をもたらすことが出来るか注目だ。
注目選手
田中将大
7年ぶりにNPBに復帰し、仙台に帰ってきた右腕が、13年前北京で味わった屈辱を晴らすべく、オリンピックで強敵を相手にマウンドに上がる。
昨年までMLBの超名門球団、ニューヨーク・ヤンキースで7年間先発ローテーションを守り抜き、6年連続2桁勝利を挙げるなど通算78勝を挙げ、厳しい目を向けるニューヨークのファンやメディアをも納得させ続けてきた。
そして7年ぶりのNPB復帰シーズンとなった2021年。MLB公式球とNPB公式球との違いへの対応など難しい部分もあったが、4月24日西武戦で6回1失点で日本復帰後初勝利を挙げ、同時に史上139人目の日本球界での通算100勝を達成した。
シーズンでは4勝に留まってはいるが、登板を重ねるごとに田中らしい投球をどんどんと見せており、調子は上向きだ。
国際大会への出場は2009年のWBC以来、オリンピックは2008年以来。2大会は最年少だったが、今大会では投手陣最年長としてチームを引っ張る役割を担うことになる。
また坂本勇人、柳田悠岐、大野雄大と1988年生まれの同世代の選手と代表チームで共に戦うというのもプロ入り後では初めての機会を得た形となった。
豊富な経験、重圧を跳ね除けてきた精神、前回五輪の悔しさを知る唯一の現役選手として、田中の投球が侍ジャパンの悲願の金メダルを呼び込むか注目だ。
大会日程
7月28日 ドミニカ共和国 12時00分 (福島県営あずま球場)
7月31日 メキシコ 12時00分 (横浜スタジアム)