風に吹かれて

麺は打ち立て

うどんは茹でたて

だしは挽きたて

天婦羅は揚げたて

郡山の駅構内にある木篇に午と書いたうどん屋さんで,僕は一口そそるごとに「うまい!」を胸の中で叫びました.

打ち立てを茹でたてにした“うどん”は,関東人にはもってこいの歯ごたえです.

のど越しを,より堪能するために,蓮華に挽きたて“だし“の汁を掬って,うどんと一緒に咽に送り込んでやります.

さらにその汁をたっぷりと吸いこんだ揚げたて天婦羅をかじりとろうものなら,「うまい!」を連発せずにはいられません.

横には,郡山名物の“ままどおる”が座しています.

「この“うどん”は,君にひけをとらない郡山名物になるぞ.郡山“打ち”“だし”うどんだ.」と箱詰めの“ままどおる”の文字を見つめながら,勝手な衝動に駆られています.

一仕事終えた今だからこその盛り上がりでしょうか.


今年も奥羽大学に来ました.

あれから1年,患者さんも戻ってきて病院前の駐車場には車が沢山停まっていました.

こんな突飛な講義で許されるかな,学生さんは受け入れてくれるかな,みんな寝ちゃったらどうしよう.行きの新幹線の中で弱気になりかけた僕を,学生さん自身が吹き飛ばしてくれました.

「冬休みになったら,先生のところに見学にいってもいいですか.」

ありがたい,喜んで,待ってるから.

「先生の名刺をください.メールしますから.」

まあ,なんと積極的な.


今の学生さんは,生き方が熱心です.

物が満たされた時代だからこそ,高度成長やバブルなんて知らない世代だからこそ,横並びで一斉に幸せになれるなんて思ってやしないので,自分にとって必要なもの,やりたいものを一生懸命探しているのです.

学生さんから思わぬ拍手を受け,僕は「また会いましょう.」の合言葉を投げかけ講義を終えました.

彼らとの出会いも束の間,磐越西線を目の前に従え,磐梯山を望む学び舎に別れを告げました.

秋爛漫

まぶしい陽ざしに少し目を細めて

やっぱり少し冷たいかな,風が頬を横切ります.

留守を守ってくれている若き医局員たちに届けよう,ままどおる.

「ちゃんと買ってきてよ.」と叱咤激励してくれた妻に届けよう,ままどおる.


来年も,“郡山打ちだしうどん”が食べられますように.