[題]ゼロ
「っちょ……」
声を出しても聞いてくれない。
ただ走った。
階段の前まで来た。
彼は引っ張っていたあたしの腕を離し、膝に手を付いた。
はぁ……結構な距離だった。
少し息を切らしたあたしは、荒い呼吸を繰り返した。
でも、目の前の彼は、肩を上下に揺らし、激しく息をしていた。
もっと急がないと……もっともっと息をしないと、
まるで、死んでしまうかのような、呼吸だった。
荒く、はぁはぁと言う彼を見て、
「大丈夫……です、か?」
と問うてみた。
彼は一拍置いて、
「……っへ?あ……あぁ、っ俺かっ……」
いかにも大丈夫じゃないような言い方だった。
「休み……「♪キーンコーンカーンコーン……」
休みますか、と言おうとしたとき、チャイムが鳴り響いた。
「行こ」
彼はまだ辛そうに息をしていたけど、
行こう、とただ言うので、あたしもついて行った。
やっとついた、1番上。
「え」
ついてみてわかった。
「ここって……屋上?」
歩いて上ってきたので、息はすでに整っていた。
「おう、あ。入れるぜ」
彼はそう言ってポケットに手を入れた。
出てきたのは、鍵だった。
「いろいろあって持ってんだぁ」
といたずらのような笑顔を見せ、
カチャリと鍵をひねった。
ギギギ…と古びた音が響く。
青空だった。
青い空に、優しい白がかかったかのように、
優しく調合している、綺麗で透明で、
なぜか途方に暮れるような、そんな色だった。