コードネーム紀子 | 芥川 ケンの「エビ天さかおとし」

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魂のカウンセラーが綴るズバリなブログ

こんにちは芥川ケンです。今日は私が書きます。「だから今でも原節子」で書いた小津安二郎監督と原節子さんのコンビによる紀子三部作「晩春」「麦秋」「東京物語」ですが、映画通の人は、「麦秋」が一番良いということが多いです。それは、「晩春」と「東京物語」には、独特のいやらしさがあるからです。もちろん、いやらしさが好きな私は、「麦秋」が物足りないです。


「晩春」では、何と言っても、紀子の結婚が決まり、最後の父娘旅行をする京都の旅館の部屋の場面です。映画ファンに繰り返し語られている名場面です。これ以上楽しいことなんてないから、結婚は取りやめたいという紀子に、笠智衆さん演じる父親が、こんこんと諭します。私と一緒に80年代アイドルのコンサートを仕切り続けたW君は、この場面を体験したいためだけに娘が欲しいと言っていました。多くの人は、ここで父娘の近親相姦があったのだと言います。しかし、そんなことはあり得ません。人間の感情の微妙な襞を知っている人なら、誰でもわかることです。


とは言え、多くの人にそう思わせる理由もあるのです。それは、原節子さんの濃密な、ねっとりした演技です。特に上目使いと、甘えた声の出し方です。正にここにこそ、原節子は何を演じても原節子と私が断言する理由があるのです。彼女は、自分の西洋人的な色気を誰よりもよく熟知していました。それを利用して人を惹き付ける術に長けていたのです。原節子さんは、頑なに水着撮影を拒否しましたが、それも術の内です。何処までも思わせぶりな色気で勝負したのです。父と娘に男女の関係はあったのかなかったのか、曖昧に匂わせるのが、彼女の戦略です。そのためには清純そのものでも駄目、露骨でも駄目で、濃密でねっとりしていなければなりません。彼女は恵まれた容姿を生かして、原節子の演技というものを確立しました。


ここに何を撮っても小津安二郎の小津安二郎監督と、何を演じても笠智衆の笠智衆さんが絡むのですから、上手くいかないわけがありません。三位一体で、歴史的名場面が生まれました。


次に「東京物語」です。この作品では何と言っても、クライマックスの、亡き次男の嫁・紀子と、笠智衆さん演じる義父が語り合う場面です。「晩春」と同じく原節子さんと笠智衆さんが二人きりの場面で、やはり多くの人に語り継がれています。お母さんの葬儀も済み、東京と大阪の子どもたちが形見だけもらってさっさと帰った後、一番忙しい紀子だけが残ってお父さんのお世話をしています。でもその紀子もいよいよ東京に帰らなければならない。義父はしみじみと、「いわば他人のあんたの方が、よっぽどわしらに良うしてくれた。ありーがと」と語ります。これに対して紀子は「ずるいんです」と告白して泣きます。つまり、良く見られたくて良い人間を演じていたというのです。義父は、ここでさらに彼女の正直を賞賛します。


この場面もまた、「晩春」と同じです。原節子さんの演技は、何処までもねっとりと濃密です。義父と嫁の間のいやらしい関係を想起させます。でも、もちろん何も起きていっこないのです。何も無いからこそ、色気に満ちているのです。ここでも原節子さんは、鮮烈なまでに、期待される原節子像を演じています。だから「紀子」とは、一つのコードネームのようなものです。小津監督は、俺が撮る原節子はみんなこうだ、という自負があるから、全て同じ名前で統一したのです。


こう見てくると、原節子さんの引退と隠遁もまた、彼女一流の壮大な演出だったことがわかります。この演出によって、原節子は永遠の処女、永遠のアイドルになりました。そして今や歴史上に固定された色気によって、映画ファンの妄想を延々と掻き立てているのです。


さて、ここでいきなり昨日の話題に戻りましょう。大家志津香さんが圏外になった最大の理由は、そういった女性的な戦略を全く使えない人だからではないでしょうか。しかし私は、原節子さんか大家志津香さんか、どっちかを選べと言われたら、迷いなくしいちゃんを選ぶでしょう。


前回途中で全て消えてしまった話を、原節子さんのために核心部分を全部伏せて書き直しました。今度は呪いが働かず、消えませんでした。それに、昨夜のアクエリアスの新月をきっかけに、ようやく全てが良い方向に動き出したようです。いわゆる底を打って、後は上がるだけという状況ですね。やっと原節子さんの話も出来るようになりました。


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芥川ケン バサラエルボー専任講師 愛と涙のカウンセラー。あらゆる分野に対応できるセミナー達人。小津安二郎監督の如きギリギリ芸術の確信犯。


太宰院マキ バサラエルボー代表 一児の母。長年エステ業界で修業し、その人自身の治癒力を引き出すヒーリング技術を身に付ける。原節子さんの如き永遠のマグノリア。


夏目魔弓 バサラエルボー幹事 さすらいの歯科医。イギリスをこよなく愛し、真の文化とは何かを探究し続ける真面目人間。笠智衆さんの如き優しき頑固者。