こんにちはバルコアです。
以上の2例は集団催眠応用の例であるが、さらに日常の中に使われている個人催眠の例について見てみよう。
大阪商人の間には ”卓” なる商法が昔からいわれている。
大阪商人の世界に入ると、まず商売人・品売人・物売人と考えるわけだ。
それでは商売人とは、何を売るのかというと ”商” を売るのが、商売人だというのだ。
では ”商” とは何か、このことを体験させるため、ある大阪では新入社員にまず教育として「天井のない蚊帳」を売りに行かせるという。
真新しい蚊帳を持ち出し、はさみで天井をジョキジョキと切り抜き、これを定価で売ってこいと命令する。
営業を志す新入社員の頭の中では、良い品物を売るのが営業の仕事だという観念が頭にしみ込んでいるはずで、この観念を撃ち破るのがこの ”仕事” の目的なのだが、新入には、その意味はわかりようがない。
あるものは親類に泣きつき買ってもらい、またあるものは天井のないのをだまして売り逃げしてくることであろうし、なんでもよいのだ。
ともかく、売れるまで会社には帰れないのである。
どうやら全員が恰好をつけて帰社すると、今度は帽子を取り出し、そのつばを切り落としてしまう。
そして天井のない蚊帳を売った同じ家に行き、その帽子を売ってこいと命令する。
そこでウソをついて売り逃げしてきたものは、当然その家に行くことができないが、行かざるを得なくなってくる。
この2つの仕事をやり終えたとき、新入社員の頭の中にはおぼろげながらもつかめてくるものがある。
いったい新入社員は、何がわかるというのだろうか。