こんにちはバルコアです。

 

もう旧聞に属するが、九州の八幡の製鉄所に講演に行ったときのことである。

会員の野田工学博士が海軍中将で退官後そこで技監をしていた。

講演が終わって、夜は野田博士の官舎に泊まって翌朝の朝食のときであった。

「いやあ、まったく驚きました、実は先生の寝がけをのぞき見したんですよ」という。

「何のために」と尋ねると、

「先生が、寝がけに、どんな自己暗示をされるかと思って、抜き足、さし足、夫婦でもってのぞき見したんです」

「それでどうだったかい」

「鏡を見られて、あんな真剣な態度でされるとは思いませんでした。先生くらいになられても、まだおやりになるんですか」というから、

「ああ、一生やるよ!」と答えた。

 

すると、

「へえ、私どもは聞きっ放していましたね」といって、夫婦で顔を見合わせて、「いえね、やらないことはないんですけれど、一週間に一回か二回です」と。

 

まあ、やらないよりはいいが、中には古い会員には聞きっ放しで、

「ああ、あれは年一回くらいだなあ」とか、あるいは、

「プラナヤマ、はて何だっけ?あああの深呼吸することか。五年に一回くらいしかやらん」

といった、とぼけたのがいる。

 

そんなのは観念要素の更改なんて、本当に真剣にやってはいないのだ。

石灯籠と同じで、ただ苔(こけ)が生えているだけで、何の役にも立たない。

新しい人は、そんな古い人の真似をしてはいけない。

 

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