
馬淵川の辺りにある果樹園、第1農場にやってきました。
最初に目に入ってくる建物がこの農場管理室。
とはいっても小さな部屋と作業場があるだけの古い建物です。
しかし今から数十年も前、この管理室は名農気象班の本拠地として
県下に圧倒的な存在感を示していました。
建物の周辺には百葉箱や日照計などの観測機器がたくさんあり、
365日休みなく観測されたデータはここで手作業で集計されては
毎月マンスリーレポートを市町村などに送付。
気象庁の発表ではわからないこの地域に特化したデータを何十年と提供し続けました。
地域の試験場ですら「名農気象班のデータでなければ信頼できない」というぐらい
抜群の信頼感を得ていました。なぜなら測定機器はすべて検定を受けたもの。
つまり気象庁と同じに正式データとして公開できたのです。
まだコンピュータのない時代、船舶無線なども活用して天気図を入手し、
馬淵川が氾濫する前に農場に避難指示などを出していたものです。
また単なる観測だけではなく南部町で多発する冷害の詳細な仕組みやその対策を示すなど
研究チームとしても高く評価され、何度も科学コンクールで日本一に輝いています。
しかし時代の流れで令和になるとデータはコンピュータで処理することになりました。
さらに10年ぐらい経つと自動観測もできるようになります。
建物に高いアンテナのようなものが立っていますが
これは観測データを遠く離れた学校の農場に自動送信するためのもの。
データ処理はここではなく校内で行われるようになっていったのです。
ちょうどその頃、アメダスの観測ポイントが増え
簡単に地域の気象情報を誰でも入手できるようになり、今はその役目を終えています。
しかし名農の探求精神の発祥地であることにはかわりありません。
名農ヘリテージです。