誰もいない体育館で発表練習をしている名農生たち。
これは2代目のTEAM FLORA PHOTONICSの女子メンバーです。
2011年3月11日の東日本大震災後、大きな被害のなかった名久井農業高校は
まもなく授業を再開。残っていた農業クラブの行事などをこなしていきます。
これはプロジェクト発表会の前日。課題研究の授業がもうないので
みんな放課後に体育館に集まり余震におびえながら練習していました。
実はここで不思議な出来事がおきます。
当時のメンバーは農業クラブの役員がいっぱい、さらに生徒会長もいます。
意欲も能力も最高だった彼女たちの目標はプロジェクト発表で県大会に出場すること。
テクノ愛をはじめ、いろいろな全国大会で最優秀を受賞していた彼女たちは
すでに一目置かれていましたが、何としても学校代表になろうと、
なんと研究発表の3分野すべてにエントリーします。ところが全分野とも2位。
かろうじて一人が意見発表の代表になりましたが、これにはショックを隠せません。
農業クラブの県大会は6月、文化部が多かったメンバーは目指すものがなくなり
いったい何をして過ごそうかと途方にくれていました。
そこで立ち上がったのが震災で被害を受けた種差海岸のサクラソウ救出。
彼女たちは4月から被災地や県庁などいろいろなところに働きかけ
人工受粉でサクラソウの種子をとり、保護栽培を行う許可を県知事からいただいたのです。
5月から毎週、海岸にいっては調査。結実は6月。播種は7月。無我夢中で走り出します。
震災に立ち向かう女子高生たちの姿は新聞はもちろん、テレビで何度も紹介されたので
地元市民はもちろん、日本中のサクラソウ愛好家が注目。
激励の手紙や支援金などが山ほど届きました。
そして見事、2012年春に花を咲かせることに成功し、社会貢献を果たします。
今考えると、すべてはこのプロジェクト発表会で負けたから。
行き場のないやる気を、後輩とともに復興への活動に全力で投入した成果です。
神話では女神フローラは亡くなった息子をプリムラ、つまりサクラソウにかえたといいます。
サクラソウのピンチ。きっとフローラが彼女たちを海岸に向かわせたのではないかと
集まるとみんなで話をしています。意見発表に出場したメンバーは東北大会まで駒を進め
ともに活動した2年生たちは2012年、
この活動で水の国際大会でストックホルムに招かれています。