
この地域の名物のひとつに「南部せんべい」があります。
日本全国、せんべいといったら米粉が原料。
しかしここ南部地方はヤマセという低温多湿の風が吹き込むので
かつては安定してお米が栽培できない地域でした。
そのため普段の食事は粟(あわ)と稗(ひえ)。
それに小麦や蕎麦、さらに豆やイモなども加えて
バラエティーに富んだ雑穀文化を生み出しました。
この南部せんべいもそんな食文化のひとつで原料は小麦粉です。
一般にパリッと焼いたものを食べるのですが
なかには半生、つまりレアチーズケーキならぬ
レア南部せんべいというものがあります。
それがこれ。「てんぽ」といいます。
半生ということもあり、焼きたてはまるでお餅のよう。
しかし冷めるとうどんのように次第に弾力は失われます。
つまり、この熱々ふわふわのせんべいを食べられるのは
せんべい屋さんの店頭だけ。昔はいろいろなところに
お店があったのでよく食べたものです。
さて調べてみると、このてんぽという名称には面白い由来がありました。
昔のお金である天保銭つまり天保時代の銅銭のことを略して「てんぽ」といいました。
天保銭の貨幣価値は100文とされていましたが、
質が悪く、実際は80文として流通していたそうです。
そんなことから実際よりも足りないものを「てんぽ」と呼んだそうです。
つまり、この食べるてんぽせんべいも普通よりも焼き方が足りないので
「てんぽ」と呼んだといわれています。
しかし飢饉などの際の非常食にも用いられた大切な食べ物だったといいます。
探すと今でも手に入ります。また今は電子レンジがあるので
冷えてもすぐふわふわに戻せます。見つけたらぜひ食べてみてください。