
これはいったい何でしょう。
今まで見かけるたびに紹介してきましたが
またまたこの怪しい食べ物を見つけてしまいました。
これは南部せんべい。青森県から岩手県の太平洋側にかけて
昔から作られる小麦のせんべいです。
せんべいの材料は米粉というのが日本の常識。
ところが低温多湿の偏東風「ヤマセ」の吹くこの地域では冷害が多発。
したがってお米があまり採れませんでした。
そのため寒さに強い麦や豆など雑穀の食文化が花開きます。
その独特な食のひとつがこの南部せんべいなのです。
ところがこのせんべい、2枚あわせになっているのが分かりますか。
そうです、赤飯を挟んでいるのです。
まるでせんべいのサンドウィッチ。お米の水分を吸って
せんべいがしんなりしているのが特徴です。
でも何のためにこんな不思議なものができたのでしょう。
おそらくこれは農作業の休憩に食べる軽食。つまり携行食です。
なんとせんべいは「食べられる容器」として利用されているのです。
食べるとなくなるんですから、なかなかのアイデアです。
しかしこの食べ方は比較的最近に生まれたものだと推測します。
なぜならかつて貴重だったお米はお盆や正月じゃないと食べなかったから。
野良仕事で食べるなど考えられません。
きっと品種改良や新しい栽培技術が開発され、
お米が採れるようになってから生まれたものだと思うのです。
雑穀という古い食文化とお米という新しい食文化の融合。
時代の狭間で生まれた先人の知恵ではないでしょうか。