
名久井農業高校には農業経営シミュレーションという学校設定科目があります。
これは生徒たちに1年間畑を貸し、実際に作物の生産販売を体験させることで
農業経営の仕組みはもちろん、課題を乗り越える醍醐味を肌で感じてもらおうと
お隣の三本木農業高校で生まれた全国でも例のないユニークな科目です。
従来の科目と大きく違う点は先生の指導法。一般に授業は先生が主導する
ティーチングが主流ですが、この科目の主役はあくまで生徒たち。
いつ何を栽培してどのように販売するか、さらに今日の授業では
何をするかなど決定権はすべて生徒たちに渡しました。
先生はいつもの癖で、ついつい口を出したくなりますがここはじっと我慢。
コーチングに徹底します。「求める答えは自分の中にある」とはコーチングの名言。
先生は生徒の考えをよく聞いて、アドバイスするだけ。
彼らの意思を引き出し、成功できるようサポートに徹します。
そのためには授業以外での準備がさまざま必要で慣れるまでは大変でしたが、
教え込む今までの授業とは違う生徒たちの生き生きした姿を楽しんだものです。
しかし彼らは彼らで自由と引き換えに大きな責任を感じていたようですが・・・。
これはそんな農業経営シミュレーションで作った漬物に貼り付けるラベル。
三農の生徒たちの依頼で作ったものです。生徒が作る模擬農業法人は毎年4社。
10月にコンテストを兼ねた各社の漬物や野菜の即売イベントが開催されました。
名付けて「四社大祭」。八戸市の夏祭り「三社大祭」にひっかけたネーミングです。
このイベントを通して、彼らは同じ野菜でも加工すると高値で取引できること、
そのためにはネーミングや生産履歴などの工夫が重要なことを学んでいました。
最期の授業で「一番辛かったけれど、一番やりがいのある授業だった」という
感想をよくいただきます。これは指導者にとって最大の褒め言葉でした。
またユニークなのは毎年、授業の改善点を話してもらうこと。
実際に体験したプレーヤーの意見を常に取り入れ、毎年ルールを見直したものです。
先生と生徒が一緒になって作った科目「農業経営シミュレーション」は
20年経った今も名農や三農で生徒たちを育てています。
なお長い歴史のある八戸市の三社大祭の方は
今年もコロナで山車の運行中止が決定しました。残念です。