
ここは環境システム科の本拠地である施設園芸実験室の一角。
小さな部屋にエアコンが完備された育苗室があります。
ここには大学の研究室に導入されているのと同じLEDの波長を
コントロールできる精巧な研究用の水耕栽培装置が2台あります。
県に何度もお願いして導入したこの装置ですが、実は研究目的だけではありません。
環境システム科のメインである学校設定科目「起業チャレンジ」のためなのです。
この科目は3年生が模擬農業法人を設立して水耕栽培を行いながら販売し
ビジネスのノウハウや醍醐味を体験してもらう全国でも名農にしかない授業。
春から秋まで野菜の生産を行うのですが、野菜には播種の適温があります。
したがって夏が近づくと気温が上昇するため、育苗に適さない環境となっていきます。
彼らが安定した通年ビジネスをするためには気温のコントロールが欠かせないことから
他校には例のない光と温度を制御できる育苗室を無理いって用意してもらったのです。
久しぶりに覗いてみると室内はピンク系の赤。これを見て嬉しくなりました。
植物は赤色光と遠赤色光の比率から、自分が日当たりにいるのかどうか判断します。
なぜなら日陰で発芽したら太陽光を受けられず枯死するかもしれないからです。
日当たりに多いのは赤色光。したがって多くの植物は赤色光を照射すると
発芽しやすくなります。起業チャレンジなのか課題研究なのかわかりませんが
ここで発芽を促している人たちは、植物生理をちゃんと理解しているようで
頼もしい限りです。植物は温度や日長など成長を左右するファクターがあまりに多く、
工業技術のようにそう簡単に制御できませんが、植物生理に基づいて働きかけると
意外に素直に応答してくれます。生き物である植物にこちらの思いが通じることは
嬉しいもので、その醍醐味は機械を操作するよりも何倍も楽しいもの。
環境システム科にはそんな新しい農業の楽しさや可能性を感じてもらいたいものです。