人工受粉によって津波に飲まれた種差海岸のサクラソウを救出したフローラ。
なぜ初めての人工受粉に慌てることなく落ち着いてできたのでしょうか。
その理由がこの写真に残っています。これは第2農場の草花温室内で
プリムラジュリアンの人工受粉をしているフローラ。
時は東日本大震災が起きる2011年3月11日のちょうど1ヶ月前です。
ある日ジュリアンがきれいに咲いたので人工受粉でもしてみようかとメンバーに声をかけます。
とはいっても3年生は卒業直前で出校していません。残っているのは2年生と当時のJr.3名。
彼女たちは、あまり一緒に活動をしていなかったのですが、開花は旬のもの。
せっかくだからと誘っては見ましたが、放課後だし部活もあるので期待はしませんでした。
しかし、なんとみなさんぞろぞろと放課後、温室にやってきたではありませんか。
プリムラは同じような花に見えても、雄しべが雌しべより長いものと短いものがあります。
これは自然界で自家受粉しないように進化したプリムラの知恵です。
誘ったはいいものの、こちらも初体験。しかしいざ人工受粉をしようとすると、
花粉を取ったり雌しべを探すのにちょっと苦労します。
最初はうまくいかず困っていた彼女たちですが、15分もするとコツを習得。
私だけのプリムラ・ジュリアンを作るんだと楽しそうに遊んでいました。
ところがこの1ヶ月後の3月に東日本大震災が発生。サクラソウを救出したい。
そんな思いで、種差海岸に出向き、無我夢中で人工受粉をしたのが5月でした。
もうお分かりだと思いますが、プリムラの和名はサクラソウ。花の構造も同じです。
つまり彼女たちがこの日、偶然にも遊んだ経験が2ヶ月後に活きたのです。
今までやったこともないのに、なぜあの時、人工受粉をしようなんて思ったのでしょう。
そして忙しい中、なぜ2年生もJr.もみんな駆けつけたのでしょうか。
まるで今からやってくる震災のために事前練習をさせられたような気がします。
あれから10年経ちますが、今なお不思議な出来事だと思っています。