
農業の学習は実学。いくら机上で学んでも
現場に反映できなければ何の意味もありません。
そこで机上と現場の架け橋になり学習をサポートしてくれるのが農業クラブ。
研究活動会や技術競技会などを開催して、
日頃身に付けた知識と技術をチェックをしてくれます。
なかでも面白いのが農業鑑定競技。1問20秒で農業各分野で実際に用いる
植物や種子、農具や実験器具の名前などを答える農業版クイズショック。
そのため農業クラブでは、時々このような実物を廊下に並べては
腕試ししないかと誘ってきます。栽培をするにはその作物の特徴はもちろん
生育を阻害する病害虫、逆に促進させる農薬や肥料、さらに気候の読み方や
農機具の使い方など、多角的な知識や技術が必要です。
これが飼育となると獣医さんのような知識が必要となり、
土木や生物工学、食品製造ではその世界独特の知識と技術が求められます。
したがって他学科の問題を見るのも、その世界が感じられて面白いものです。
さてこれらの幅広い分野を学ぶために栽培環境、土・肥料、作物保護など各論を学ぶ
科目が昔はたくさんありました。しかし一時科目の統廃合が進み、科目数は激減。
先ほどの科目はなくなり、作物や野菜、果樹などの科目内で扱うようになりました。
したがって今の農業高校生は昔より幅広い分野を学習する機会が減っているように思います。
ところが学習指導要領が改訂となり、2022年から「栽培と環境」「飼育と環境」という
懐かしい雰囲気がする科目が復活するようです。統廃合しては、また復活して細分化。
何でもそうですが、振り子のように繰り返しているようです。
大変なのは指導者。昔、これらの科目を担当していましたが経験の少ない若い時は
内容が難しく、事前勉強に明け暮れました。肥料や土壌、病気や害虫、気象など
久しく教えていなかった方は、ちょっと思い出さなければなりません。
コツは机上ではなく、積極的に実験や試験栽培を通して体験的に学習させること。
現場での生物の振る舞いを通して関係を理解し、知識にすると覚えやすいからです。
机上で頭でっかちになっても現場で生かせなければ無意味。みんなで農場に行きましょう。
「農学栄えて農業滅ぶ」。東京農業大学の初代学長だった横井時敬先生の言葉です。