強烈なインパクトで日本中、話題となったフローラの白いりんご。
しかし今はどこに行っても見つけることはできません。
これにはいくつか理由があります。
袋をかぶせて栽培すると、強光から身を守る必要がないため果皮は薄くなります。
白いりんごの長所のひとつは皮が薄く口に残らないので、丸かじりできること。
りんごの短所である面倒な皮むきをせずに食べられるというのが強みでした。
しかしこの長所は輸送上では弱点となります。すぐ傷ついてしまうのです。
大量生産、大量販売する現在の農業の流通システムに乗らないものは淘汰される世界。
爽やかな甘さ、しっかりした果肉。美味しいだけに残念です。
でもよく考えるとこれは「南部太ねぎ」が衰退していったのと同じ理由。
つまり先輩太ねぎを参考に、ここだけで食べられるというような付加価値をアピールすれば
もしかしたら鮮やかに復活できる可能性があります。
ところがもうひとつ理由が重くのしかかっています。
それはこのところの猛暑。図のように夏場の高温で真っ白にならなくなりました。
遮光すると赤のアントシアニンは合成されませんが、
黄色のカロチノイドの合成には光が不要。温度さえあれば促進されます。
そのため暑い夏は、どんなりんごでも見事な黄色に変えてしまうのです。
すべてのりんごを黄色にする自信だけはありますが、これでは白いりんごと名乗れません。
そこでフローラは遮熱するアルミ袋をかぶせたり、標高の高い山間の園地で栽培するなど
いろいろ工夫しますが、やはり黄色。そんなこともあってフローラは
園芸科学科在籍最後になった2014年、NHKのあさイチで紹介してもらったのを最後に
フローラの代名詞となった白いりんごの栽培を断念しました。
この図は2013年のフローラの3年生が夏の平均気温と色の関係を示したもの。
東京ビッグサイトで開催された日本最大級の環境イベント「エコプロ」で
バイオサーモレコーダー「夏の記憶」という名で黄化現象を紹介し受賞しました。
この年の3年生はわずか4名の女子。この黄色のりんごを見ると
班員の家の高台の果樹園を毎週訪れては悪戦苦闘したのを思い出されます。
あれからもう5年以上経ちます。応用できそうな新技術は生まれたでしょうか?