
秋も深まり周囲から鮮やかな色が消えていく中、
ウインブルドンカラーの紫と緑が小春日和の光を集め輝いています。
これはビオラ。かつては大輪の三色すみれをパンジー、
小ぶりの花を咲かせるものをビオラと区別していました。
ところが両者の間で交配が進み、今では区別すること自体
無駄だといわれるように複雑になってきました。
パンジーやビオラを見ると思い出すことがあります。
それが前任校で生物工学研究室のメンバーと作った「テーブルパンジー」。
理化学研究所の協力のもと開発したユニークな栽培法です。
パンジーは可愛いので誰でも一度は鉢に植え
室内に飾ろうと思ったことがあるはずです。
しかし実際にやってみると花の下の茎である花首が伸びてきて
みっともない姿になってしまいます。理由は光不足による徒長です。
これを改善したのが「テーブルパンジー」。
植物ホルモンのブラシノステロイドの生成阻害剤「ブラシナゾール」を散布し
光感受性を高めることによって誕生します。
室内の机上に可愛いパンジーが咲いている。
知らない人にとってはごく自然なほのぼのとした風景ですが、
分かる人には驚愕の風景。何が起きたんだとみなさん驚かれたものです。
確か埼玉県の理化学研究所の公開デーに参加して一緒に展示していただいたはずです。
しかし実用化されませんでした。それはブラシナゾールが植物成長調整剤として
登録されなかったからです。結局、実験室レベルや自分で楽しむ分しかできず
開発は断念されました。机上に咲くパンジーやミニケイトウなどは
もし販売したら大人気だったはず。アイデアがあっても
法的な制限で実用化できないものってたくさんあるんですね。
さてこれから冬を迎えますが、ビオラはますます元気。
越冬してくれるのを期待しています。