名久井農業高校には農業経営シミュレーションという学校設定科目があります。
これは前任校の三本木農業高校時代、ある先生と一緒に企画実行した科目です。
生徒を4つのグループに分け、専用の畑を貸し与え
野菜の生産販売を競ってもらう極めてユニークな科目です。
もちろん何を栽培して、いつどのように販売するかなどの権利は生徒が握っています。
その代わり費用などのコストは全部自分で調達しなければなりません。
3年生の男子にもなると、ちょっと火をつけてやると闘争本能むき出して
他社には負けられないとさまざまな工夫をしながら時間を惜しんで取り組むので、
本当にびっくりさせられます。指導者はティーチングではなくコーチング。
相談は受けるけれど選択肢やヒントを与えるだけで指示は絶対しないというルールも
自分たちで決めたにもかかわらず慣れるまで大変でした。
この科目はあまりにもユニークだったため東北はもちろん、
関東などさまざまな地域の先生方が見学にきたものです。
また全国の農業高校の先生方が集まる研修会にも何度もゲストで呼ばれ紹介してきました。
確か宮城県では今も農業経営シミュレーションという名前で授業が行われているはずです。
視察の先生方が、チームティーチングで行うの授業をみて、びっくりするのが指導者の姿。
点呼をとったら今日は何をするの?と生徒に尋ね、見守っているだけからです。
日頃から指示が当たり前の先生方にとってこれは目からウロコ。
また授業中、指導者はほぼ巡回しているだけなので、なんて楽なんだと驚かれます。
しかし授業後の先生方との情報交換で、みなさんまたまたびっくりします。
指導者が常に議論しているのは、いかに彼らのモチベーションを高めるか。
1年間の長いゲーム。ゴールまで導くには小さなゴールを途中に作る必要があります。
そこで漬物コンテスト、消費者向けの感謝祭、圃場のきれいさや売り上げコンテスト、
チームTシャツやロゴマークのコンテスト、最後は株主総会など
毎月、さまざまなイベントを企てては彼らを刺激続けるのです。
授業中は暇ですが、授業じゃないところでアイデアを出し合い準備する。
見学された先生方に、そこをちゃんと伝えないと楽な授業だと勘違いし
真似して行っても思うような教育効果をあげられないからです。
今もこの手の授業は行われていますが、果たしてその部分がどうなっているかが気になります。
さて先日、古い古いデータを発見しました。媒体は、今はなきMO。
ここには二人がこの科目を始める前年、1年間の議論と試行錯誤を通して
作った教科書データがあります。データ完成は2000年3月。
20世紀の周到な予備実験と準備をもとに21世紀に花開いた科目です。