馴化温室に設置されている真っ黒な衣装ケース。温室内には全部で4個もあります。
しかしここにハンターズのユニフォームや作業着が収められているのではありません。
これは植物栽培実験用のボックス。光を通さないので中は真っ暗です。
しかし上や脇には照明などいろいろな装置を動かす電源コードなどが
入る穴が空いていたり、照明を取り付けるバーがついている優れものです。
海外製ですが作りは衣装ケースと変わらないので高価ではありません。
もちろんチームフローラの財産。2016年の2年生、FLORA9が
じゅんさいの人工栽培するために用意されたものです。
ご存知の通り、じゅんさいは沼や湖に自生する水草でその若い葉を食べます。
日本の代表的な生産地は秋田で、船に乗っては若い葉を摘んでいます。
ところが生産者の高齢化が進み、体力の必要な収穫は大変です。
そこでFLORA9は水槽での人工栽培にチャレンジしました。
水草の栽培はアクアリウムといって技術がかなり確立されています。
それでは面白くないと思い、フォトニクスお得意の人工光を照射して
生育の促進と機能性の向上を図ったのです。
水草は海藻を含め、いろいろな深さに自生しています。
すると届く光の波長が深度で異なるため、
光合成に利用する波長も植物によって変わってきます。
したがって同じ赤や青のLEDを照射しても水草によって反応は正反対。
とても面白く、みんな光量を変化させながら水だらけになって夢中で遊んだものです。
TEAM AQUA PHOTONICS と名乗っていた頃です。
2年間にわたる研究の結果、じゅんさいは浅瀬に自生するため
陸生植物と同じで赤で伸長、青で太くなることが分かりました。
さらに青色光でポリフェノールがかなり増えることも証明しました。
赤は水に吸収されて届かないからです。
労力軽減、環境の変化の影響を受けない栽培法は京都大学で開催されたテクノ愛でも受賞し、
現在、海水温などで生産が減少している海苔でもし成功したら
技術提携したいとメーカーからいわれたほどユニークな研究でした。
残念ながら後継者がなく、今は彼らが使った水槽や装置の倉庫となっています。