
きれいなピンクの花にハチがきています。
よく見るとミツバチではありません。
なんと背中に黄金色の毛がふさふさ。
まるでクマならぬハチのプーさんです。
このハチがかの有名なマルハナバチ。
チームフローラとそれはそれは深い縁のあるハチなのです。
かつてチームは数年間、種差海岸のサクラソウ保全研究に取り組んでいました。
ある年、半年かけてじっくりと海岸の環境調査をしたことがあります。
そこで得た結論は極めてショッキング。
なんと種差海岸のサクラソウはほとんどが種子繁殖ではなく栄養繁殖、
つまりクローンで増えている可能性が高いことがわかったのです。
見た目だけではわらないので群落が大きくなっていると喜ぶ方もたくさんいますが
元々は1つの苗が増えたもの。つまり将来、寿命がくると
みんな一斉に姿を消してしまう運命にあるのです。
チームが観察から出した推論は受粉者がいないこと。
もしくは活動が不活発であること。
いくら観察してもサクラソウの受粉者、
つまりポリネーターであるマルハナバチがいないのです。
聞き取り調査によると、かつては草原だった種差海岸には
大きなサクラソウ群落があり、マルハナバチもたくさんいたといいます。
種子海岸を題材に東山魁夷氏が代表作「道」を書かれた頃です。
しかしリゾート開発が始まって防風林となる松をたくさん植えたところ
日が当たらなくなりサクラソウの姿が消えたといいます。
なぜならマルハナバチは暗い森が大嫌い。
おそらくみんな森から出て行ったと考えられるのです。
自生地を将来に残すなら遺伝的多様性を持つ群落にしなければなりません。
そのために種子繁殖が必要で、マルハナバチの復活など
つまりかつての自然環境を再現する必要があるのです。
しかしこれ以上は一高校研究班の手に負えない行政の問題です。
チームフローラフォト二クスは国際会議であるアジア国立公園会議に
唯一の高校生発表者として招かれ、「花物語」と題した研究の集大成を発表。
そして「今こそ自然環境の復元を」というメッセージを最後に残し
2014年、サクラソウの保全活動から撤退しました。
この時期、マルハナバチに出会うと蘇る花の思い出です。