
冬を迎えてからの写真はどうしても色数が減ってきます。
緑の葉が恋しくなってくるころ、
園芸科学科の温室では花が咲き始めます。
これはプリムラという種類の宿根草。
鮮やかなピンクや黄色い花色が特徴で、
露地では春咲きですが、温室なので一足早く花をつけています。
とはいってもこれらはジュリアンやポリアンサという園芸種。
鑑賞するために改良されてきた品種です。
したがって野生種はもっと花が小さく可憐なものが多いようです。
この花を見ると思い出すのが2011年のフローラ。
なぜか2月上旬にこのプリムラを使って人工交配体験をしていたのです。
それも自分たちだけの花を作ろうという単なる思いつき。
放課後に当時の2〜3年生の女子メンバーが集まり遊んでいました。
プリムラには雌しべの長い長花柱花と
短い短花柱花の2種類があり、その間で交配します。
これは自家受粉を抑え、遺伝的多様性を確保するための花の工夫ですが
花の形態が違うため、いざ人が受粉させようとするとちょっとコツが必要です。
そんな挑戦をしていた1ヶ月後の3月11日、東日本大震災が発生します。
チームは5月連休明けに種差海岸の野生サクラソウ群落の緊急保護に乗り出しますが
その時、用いた手法が人工受粉による種子の救出です。
プリムラは日本語でいえばサクラソウ。
つまり偶然行っていたプリムラの交配体験が、
サクラソウの人工受粉に大いに役立ったのです。
いま考えると、まるでサクラソウを救出するための練習をしていたかのようです。
このきれいなプリムラを見るとそんな当時の様子が思い出されます。
寒から抜け出すと1ヶ月あまりで3月11日。
震災から8年目の春がやってきます。