第1節から第3節まで、アルビレックス新潟レディースのセンターバックの一角としてピッチに立っている笠井香織選手。
その笠井、ここまで<ひとり蚊帳の外>状態。
非常にキツい表現で申し訳ないのだが、主任務たる守りに関して、チームに貢献しきれていない。

たとえば、第2節の対マリーゼ戦。
鮫島彩を始めとした、東電マリーゼの縦に速く・強い攻撃を跳ね返し続けていたのは、東山・川村・中村楓・山本・大友といった選手たち。
ボールホルダーに強く身体を寄せるのも、大きくクリアするのも、主として彼女たち。
笠井に、見せ場らしい見せ場は無かった。
はっきり書けば、〝消えていた〟時間が多い。

しかし、これは想定の範囲内。
なにせ、彼女は実戦、それもハイレベルな戦いから長らく、ご無沙汰していたのだから。

笠井はもともと浦和レッズディースに所属。
でも浦和Lで、彼女は2007シーズンと2008シーズンと、2季連続で試合出場数「0」。
2006シーズンでさえ、4試合に留まっている。

そこで2009シーズン、出場機会を求めて、2部リーグの大原学園(現・長野パルセイロレディース)に移籍。
この移籍は〝成功〟で、全試合出場を果たしている。
しかし、2部リーグは2部リーグ。
なでしこリーグのディビジョン1とディビジョン2のレベルの違いは尋常じゃない。
せめて大原学園が昇格争いに加わるほど、競った状況に身を置いていたら、話はまた違ったのだろうけど、あいにくと大原学園は早々に昇格レースから脱落。

だから笠井は、まるまる3シーズンの間、高いレベルのガチンコバトルから遠ざかっていたのだ。
そんな彼女が、3シーズンぶりに国内トップリーグの試合に出て、結果を出せ、というのも、いさかか難儀な話だとは思う。

じゃあ、なぜ笠井を出すの?という話に行き当たるのだけど、東山真依子と共にアルビレディースの守備力向上を担ってきた詫間美樹が退団してしまい、代わりとなり得るのが、香織しかいないのだから仕方ない。


という笠井香織選手だが、ベレーザ戦の後半から、明るい兆しが見えてきた。
やっと周囲にキャッチアップできるようになったのだ。

日テレ・ベレーザ戦の前半は、第1・2節と同様、
“私はどうしたらいいんでしょうか?”
という感じで、仲間に加われなかった笠井。
さながら、パーティに出席したものの、会話の輪に入って行けずに壁の花となっている、人見知りの女性のような按配。

大野忍や岩渕真奈らの攻撃を食い止めるのは、専ら東山や優理らで、笠井はその流れについて行けず。
たぶん前半45分の間、笠井がボールに触ったのは、リスタートで蹴ったFKくらいのものではなかろうか。

しかし、前半40分前後から、異変が起こる。
笠井が、守備に入っていけるようになったのだ。
たとえば、ベレーザの宇津木選手だと思うのだけど、彼女にボールが渡ったとき猛然と迫り身体を寄せて、前を向かせないミッションを敢行。
宇津木は仕方なく、バックパスを選択。
なんてことのない場面だけど、この試合の宇津木から何度もチャンスを作られているので、ピンチの芽を摘み取った形なのだ。

そして後半。
前半終了間際に掴んだ〝守るタイミング〟に自信が持てたのだろう、積極的にボールをクリアにいき、また緑の選手たちの前に立ちはだかる回数が目に見えて増えた。
それまで、単なる頭数に過ぎなかったのが、後半は戦力と化した笠井。
もちろん、まだまだ甘い部分はあるのだけど、守備人として機能し出した。
でもって、このことがアルビレディースの攻勢の呼び水となったと思う。

笠井が守れていないため、その負担は左サイドバックの山本や、ボランチの川村に掛かることに。
そしてそのせいで、彼女たちが思い切ってオーバーラップする心の余裕を奪われてしまっていた。
しかし笠井が、どうにかこうにか守備を出来るようになったので、山本らの足枷が外れる。
これはデカい!!
必然的に、攻撃に割ける人数が増え、新潟Lのチャンスメイクが増え、得点機会も増加という好循環を生むことになったのだから。

笠井が、相変らず〝自分の居場所〟を見つけられずにいたら、口木未来や菅澤優衣香の惜しい、本当に惜しいシュート自体も生まれなかったのではないか。


以上のことから考察するに、アルビレックス新潟レディースが上位戦線に喰らいつけていけるかどうかのキープレイヤーは、存外、笠井香織選手なのかもしれない。
そう、上尾野辺や菅澤や、いま治療中の大石や阪口でもなく、笠井なのかも。

ベレーザ戦の後半45分間に見せた「兆し」がフロックではなく本物であり、今後もそれを伸ばせていけるようならば、新潟レディースは最終節に誇らしい戦績を残せているのではなかろうか。

まだまだ国内トップリーグの水に慣れきっていない彼女だが、なるべく早急に慣れてもらい、アルビの守備の要として自立してもらいたい。
半年後、“笠井さん、酷評したことを謝ります、ごめんなさい”と言わしめるような成長を期待しています。