あんなに悩んでいるチーフは、初めて見た。

あのお客様は7~8年振り かな。少しやつれて

昔から、難しいお題のご注文が多い。
「仮面ライダーカクテルを」なんてのもあったな。あれは楽しそうだった
「私の(僕の)イメージで」っていうのは、よくあるケース。     初見様に多い。嗜好も、肝臓の大きさも、全くわからない。

[超能力が欲しい]って思いながら、チーフは全神経を傾け、そのお客様を観察している。
そしてなんとか、お創りしてきた。

[100点じゃないな…]と思いながら、次のチャンスを伺っている

でも、今回は様子が違う 涙堪えながら、必死に考えている。

お題は、【おくりびと】

「数年介護してきた親父が、いよいよ今日か明日かとなった。チーフのカクテルで送ってくれ」

そういう事ですか…
チーフどうする?

映画は観ていたようだ。
色は白?       一点の曇りもない透明?
イや、違う……
おや、リキュールやブランデーを数本並べ始めたぞ!もしやアレを創るのか?
           [虹の向こうで、いつかまた会える日を、待っていて下さるでしょう]

比重の違いを利用して、グラスに七色の酒類を積んで【虹】を創り上げる【レインボーカクテル】

目頭を押さえ、ちびりちびりと、召し上がって下さった
[ありがとう、また来るよ]と。

チーフ、泣くな!
隣のお客様が、待ってるヨカクテルグラス