「宇宙開発は過去、マスコミの監視の中、びくびくしながら、確実性の高いプロジェクトを実行してきた。しかし宇宙開発には、リスクを取っても先に進むということも必要なのではないか。 高い塔を建ててそこへのぼってみれば新たな地平が見えるものだ。そのような塔を自ら建てるという意識を鼓舞したという点でははやぶさには意味があると考えている。川口淳一郎博士 「はやぶさ」プロジェクトマネージャ
「はやぶさ」が6月13日に帰ってきます。
地球を離れてから7年。小惑星「イトカワ」に着陸して表面の土壌サンプルを取得(できていればいいのですが)、その後地球へ戻ってくるという計画がこれほどの困難に見舞われると誰が想像できたでしょうか。それでいて成功しつつあるというこの奇跡を。
アメリカやヨーロッパの宇宙開発は停滞気味でした。予算を削られることを恐れて新しいチャレンジは行われなくなりつつあり、まだ確実な地球の衛星軌道上への衛星打ち上げばかり。
すっかり後ろ向きな形だったのですが、そんな中、「はやぶさ」のチャレンジは世界からも注目でした。
色々な困難がありました。イオンエンジンの不調、機材の故障、予期せぬ小惑星「イトカワ」の姿。その後の大トラブル。それを一つ一つ、ときに準備していたかのように、ときに信じられない方法で解決していくスタッフたち。
そんなプロジェクトのリーダーである川口博士。困難をものともせずあらゆる手を尽くすその手腕から"軌道の魔術師"と言われたりする人ですが、その人の言葉が冒頭の言葉です。
失敗を恐れぬ前にまずは前に進め。塔を建てろ。そうすれば見えない景色も見えてくる。
言葉にすれば簡単ですが、この背景をみるとその覚悟に震えます。宇宙開発に打ち上げられる衛星は形になるとして時として10年、15年とかかるものです。
まず打ち上げが成功するかもわからない。
打ちあがったからといって正常に動くとはかぎらない。ちょっと直しにいくとかそういうレベルではない。
失敗したらまた予算取りなどから始めないといけない。
安全パイを選択したくなる気持ちもわかるものじゃないですか。それなのに、あの言葉を言う。それだけの重みと納得というか覚悟があるというわけです。
数々の逸話にことかかない「はやぶさ」の長い旅路が終わるまであと半月。
もう少し、この衛星をめぐる物語をつづけます。