歪んだ世界、そこが私のいまの居場所。目に入るものすべてが歪んだ。
~一年前~
「今からちょっと行ってくるね。」
「なんで!?今何時だとおもってるの!?」
私の声を背に、彼は左の靴ひもを結んでいた。
公園に遊びに行く前の、興奮を抑えられないような子供のような顔していた。
「大丈夫、2時には戻るから。」
そう言って、心配を通り越して、呆れはてた私の頬に口づけして、扉を閉めた。
私はただただ、彼が走っていくバイクの赤いテールランプをカーテンの間からみつめていた。
はぁ…と大きなため息をついたあと、11時のつまらないテレビをつけた。
そもそも、事の始まりは彼が冬のボーナスで買った一眼レフのカメラだ。
すかっかりハマってしまい、標準のレンズじゃ、やだなんていいはじめ、少ない給料をはたいで、フィッシュ・アイとか言うレンズを買った。
それが、今日届いたのであった。
「何するのこんなの!?」
値段を見て、全くカメラなんかに興味ない私が聞くと、
「これは凄いんだって!!人の視野が…、…このレンズは……。」
聞いてられない。
彼がだらしのない顔で、ニコニコしながら喋っている言葉がまるで外国語のようで私にはまるで通じない。
要するに標準とは違うといいたいんだろう。
そんなわけで、しっぽを降りながらでていったわけである。
彼は2つ上で、かれこれ出会って3年が経っていた。
お互いに結婚を意識して、お互いの親にも挨拶にいっていた。
彼の両親とも仲良くできていたし、嫌ではなかった。
ただ、彼がこんなにも子供見たいに目にはいったら、それしか見えなくなるのは想定外であった。
つまらないテレビに目をやり、コーヒーを煎れた。
小さなアパートの部屋にコーヒーの薫りが漂った。
雑誌に目をやりながら、テレビの雑音を耳に入れながら、コーヒーを口に運んだ。
気づくと、コーヒーは1/3、テレビは見たことのない外国の映画のエンディング、雑誌は目次のページで止まっていた。
寝てしまっていたらしい。
時計にめをやると、2時50分を指していた。
ふと、何かに気づいたように周りを見渡した。
見慣れた部屋がそこにあった。
しかし、何かがたりない。
あの、子供のような笑顔がない。
今まで5分遅れる事はあっても、10分またされたことはない。
むしろ、私が待たせる方が多かったくらいだ。
時間にルーズではないことが、取り柄みたいな彼が、いない。
体に小さな震えが走った。
携帯に…あちゃー…。
また、忘れてる…。
更に震えが強くなったのがわかった。
カーテンの隙間から覗くけど、そこには冷えきったアスファルトだけ。
「どこ…?」
声までもが震えて、この二文字しか出なかった。
10、20、30分。
冷たく長い時間が過ぎた。
ちょうど、時計が4時を指すか、ささないころ、私の携帯が鳴った。
~続く~