688 魔法使いルーフィ | たまふの書物語まりふ

688 魔法使いルーフィ

人間の場合、真摯に愛を訴えられて
拒める人などいない。


それは、自由奔放な光子が
ヒッグス粒子に囚われ

自由を失った代わりに、質量を得
元素となり、宇宙の始祖になるように


人間は、愛に囚われる事で
安定と定住を求めるのである。


心のどこかで、自由だった日々を
心に描いて、時折旅に出たりして

いつか、人は一生を終えて

炎立つもと、光や電子に戻るのだ。





それを、多重次元的な構造と見るのは
文学的な幻想である。


でも、その電子の流れが
電流として、今、神様たちを乗せる

サンライズエクスプレスを動かしているのも
また、事実である。


東京駅22時。



サンライズエクスプレスは、ドアを閉じ

ゆっくりと、レールの上を走り出そうとする。



運転士は、白い手袋で
信号を指差し、ブレーキハンドルを解放、
インバータに電流を流す。


日本の日立製作所が誇る、メカトロニクスの粋、PWMインバータは
パルスの幅で電流を制御し、電力を増減するシステム。


シンプルなだけに、堅牢さに長ける。


仕組みは単純で、小電力パルス幅を

大電力制御素子で開閉すると言う仕組みである。


それぞれ、コンピュータ技術と
集積回路技術の賜物である。



細かな発振音は、パルス幅に従って音を変化させて行く。


つまり、交流モーターに発生する
誘導現象を、その幅で制御するのである。


衝撃もなく、静かに動きだす列車は
あたかも、マジック・カーペットのようだ。