花ぬすびとは罪ならず | たまふの書物語まりふ

花ぬすびとは罪ならず

お花をとられちゃったお友達に
こんなお話を贈りました。

はい。

きっと、罪を忘れてしまうほどかわいいお花だったのでしょう…


と、考えると
お話が作れそう。


…返してらっしゃい、と
お母さんに叱られて
かわいい少年は、泣きました。


…僕は、お母さんの喜ぶ顔が見たかったの。


そう言えず、ただ叱る
お母さんに
ただ、うなだれて
いるだけでした。

鉢植えのおうちに
お花を返しに行くと
垣根の向こうから、
お花にお水をあげていた
優しいお姉さんは…


「よかった。お花が無事で」

少年は、うつむきながら

ごめんなさい、と…
ちいさな声で、そう言いました。


そして、なぜだか
お母さんには言えない、

その訳を、話します。



お姉さんは、優しく微笑みながら

「…いいのよ、花ぬすびとはつみならず、って言うのよ」


優しいお姉さんは、少年の涙をガーゼのハンカチでふきながら


…そのお花、あげたのよ、坊やに。


少年は、訳がわかりません。


でも、お姉さんの優しさにまた、涙があふれ…


「あらあら、泣かないで」

お姉さんは、少年の頭をなでながら…










お母さんは、お姉さんのお話を聞きながら

坊やの気持ちにきづかなかっかた事を恥じました。


ごめんね。と…ちいさな声で坊やに言うと

坊やは、お母さんの胸で泣きました。


お母さんは、お姉さんに
…お気遣いありがとうございます。


そう、言いました。







それから…


少年は、一生懸命
花を育てました。


庭いっぱい、その花を
咲かせました。


花は、お庭のある丘いっぱいにひろがって…


お花の丘、と
今では呼ばれている…
と言うことです。


少年は、今では
すっかり、おじいちゃんに
なって…


ちいさな子を、お花畑で
あそばせたりして…

今でも、その、遠い日の事を

懐かしく思い出します。


そして、時々

お花畑の花を、鉢植えにして

その思い出を綴った絵本と一緒に

垣根のとこに、おいておきます。



…すてきな思い出、さしあげます。


そう、記して。




ーおしまい。