1月30日午前(早朝)

スミスのブログ

哨戒ヘリがレーダー照射された11日後の同海域に中国海軍フリゲート艦

江衛-II型 (ジャンウェイ2型)↑が姿を現す。

対峙した海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」↓はフリゲート艦を10マイル(16km)先より感知し、警戒態勢を最高レベルまで引き上げていた。


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母港・佐世保を出港するときより合戦準備の体制をとっていた「ゆうだち」に与えられた任務は尖閣諸島海域での監視警戒任務の他に中国海軍へのカウンタープレゼンスの意味があった。
それだけ事態は緊張状態であったことがわかる。


中国海軍フリゲート艦は「ゆうだち」の左斜め前方から艦首を向けて接近してきた。互いに航行状態ゆえに「ゆうだち」とフリゲート艦の距離は1,8マイル(2、9km)まであっというまに縮まった。
しかし接近されても「ゆうだち」は回避しない。なぜなら”ネイビーの常識”では回避=逃げたという姿をさらすのはプライドという側面だけでなく政治的な宣伝に利用される恐れがある。
逃げる=ここは中国海域であると認める行動なのだ。

「ゆうだち」の艦橋に陣取っていた幹部や航海科員たちは双眼鏡でフリゲート艦の一点を凝視していた。『射撃管制用方位盤』-射撃管制レーダーを照射する巨大な特殊アンテナ(パラボラ)だ。
これは銃でいえば照準器に相当する。レーダーを照射するときにはこいつがターゲットに向けて指向する。
「ゆうだち」の艦橋は重苦しい空気に包まれていた。


同日30日、午前10時頃


フリゲート艦の方位盤がゆっくりと動き「ゆうだち」に向けられた。
プゥー・プゥープゥー・プゥー! 強烈な警告音が艦橋と作戦指揮室に響き渡る!


「EMS探知!フリゲート艦らしい、距離近い!」

「主砲射撃管制レーダーと思われる!」

海自のEMS員(分析官)は直ちにレーダー波の方位・周波数の報告を開始。
さらにそれがロシア製管制レーダー周波数のIバンドであることを突き止めた。
中国の戦闘艦は様々な国の部品を使っているためデータを入手しやすいのだ。
"ゆうだち"の艦長は横須賀の自衛隊艦隊司令部へ第一報を入れるとともに艦内へ指示を出した。


「我、中国海軍フリゲート艦の射撃管制レーダーに捕捉されし_ 情報収集態勢を強化せよ!」

各担当官たちはすぐさま目視情報、静止画像、ビデオ撮影のほか各種データを集積した。


艦長「100mm主砲旋回位置は定位置にあるか確認せよ!」

隊員「主砲、機関砲は定位置であり、方位盤が本艦に指向している」

中国フリゲート艦は射撃管制レーダーのみを浴びせ続けているだけだったが、依然として警報は鳴り止まなかった。
そこにはフリゲート艦・艦長の強い意志が感じられた。管制レーダーは哨戒長クラスでは命じることはできない。ゆうだちの艦長は警報が鳴り響くなか


「証拠保全を行え!」「証拠保全に努めよ!」


と指示を繰り返した。艦の位置、時刻、レーダーのデータが揃えば国連憲章で禁止されている威嚇行為として国際世論に訴えることができる。
フリゲート艦は主砲を動かさず管制レーダーだけを連続照射し続け、もはや3分を超えようとしていた。
艦長は航海指揮官に回避を命じた。 これは照射面積を最小に抑えるためであり、高出力のレーダー波から見張りの隊員の被爆を避けるためだった。

そして数時間後、「弾を撃たない戦争」は幕を閉じた。
フリゲート艦もレーダー照射を停止。海域を離れていった。