爾霊山(203) | 少数派にも明日がある

少数派にも明日がある

世の中は多数派中心で
少数派には生き辛い、
息子も少数派です。


録画していた「坂の上の雲」先週分

やっと昨夜観ました



原作は何度も読んだので

ドラマの制作が決まったときは

テンション上がりましたが

所詮はテレビドラマだと

ほとんど期待してませんでした


ところがふたを開けてみると

予想に反していい

そこらへんのつまらない邦画よりよほどよく出来てます


なにより
司馬遼太郎の世界観を損ねないように細部に気を遣いながら作られていると思います




先週放送分は個人的には一番好きな部分



空しく人命を消費し日露戦争そのものの行方を左右しかねない敗戦を繰り返す乃木第三軍に

乃木と同郷の児玉源太郎が常識破りに乗り込み一時的に指揮し

作戦の大転回によってこの旅順攻撃を終結させる話でした



原作もこの件(くだり)を読むたびに泣けます


注1)史実ではなく司馬遼太郎の創作であると言われています

注2)ワタシは右ではありません



いずれにせよ児玉源太郎はこの戦争よる心労が祟ってか終戦8ヶ月後に脳溢血で逝かれてます(55歳)












そして本日の放送はテレビ欄によると

「敵艦見ゆ~ロシア最大のバルチック艦隊出現…嵐のような砲弾にたたかれる連合艦隊!奇跡の東郷ターン」







彼我の艦隊は刻々近づいている。
安保清種はできるだけ落ちつくように自分に言いきかせていたが、しかし彼我の速力が相当速く、気のせいか、瞬くごとに敵の艦影が大きくなるような気がする。
安保砲術長の部下が、測距儀に両眼を押しつけている長谷川清少尉であった。その長谷川が、
「距離八千五百メートル。―」
といったとき、安保砲術長ほたまりかねて東郷と加藤に対し、「もう八千五百メートルです」と言わでものことであったが陣形決定をせきたてたい気持ちもあって叫んでしまった。

加藤参謀長はふりむくなり、
「砲術長」
と蒼白な顔で言った。加藤の胃痛はこのときもなおつづいていた。
「君が、ひとつスワロフを測ってくれるか」
といった。このあたりが、加藤という、いつのばあいでも不気味なほどに冷静でいられる男のふしぎさであった。敵旗艦スワロフとの距離は長谷川少尉が測距儀をのぞきながら報告したばかりであり、安保少佐があらためて測りなおすまでもなかった。
安保少佐は真之(秋山)の横をすり抜けて後方へゆき、長谷川少尉と交代した。のぞくなり、おどろいた。すでに彼我の距離は八千メートルに近づいていたのである。
「もはや八千メートル」
と叫び、そのあと、
――どちら側で戦さをされるのですか。
とどなった。
左舷か、右舷か、どちらであるかを決めてもらわねば射撃指揮を準備ができないのである。このとき安保清種ほどの者でも、東郷が考えていた陣形を想像することができなかった。
「私は大声でつぶやいたのです」
と、安保清種はのちに語っている。つぶやいたというのは東郷と加藤をどなりあげるような失礼をしたわけではない、ということであろう。
ところがかれがそうつぶやいたとき、安保砲術長の記憶では、かれの眼前で背を見せている東郷の右手が高くあがり、左にむかって半円をえがくようにして一転したのである。
瞬間、加藤は東郷に問うた。東郷が点頭した。このとき、世界の海軍戦術の常識をうちやぶったところの異様な陣形が指示された。
「艦長。取舵一杯。―――」
と、加藤は、一度きけばたれでも忘れられないほどに甲高い声で叫んだ。


(原作より)