起床し、旅の準備を進め、朝飯を食らい、トイレを済ませ、家を出た。
この家に暫く戻らぬ可能性もあるということに、一抹の恐怖と不安を感じながら、旅への第一歩を踏み出す。
新富士駅から新幹線に乗るため、格安切符を買わんと券売機へ歩を進める最中、190cmはあろう大柄の異国の黒人が「切符ノ買イ方ワカラナイ」と声をかけてきた。
名古屋に行きたいという黒人は、ナイジェリア出身の出稼ぎ労働者であった。
片言の日本語より英語の方が分かりやすい思い、英語で買い方を説明。
「アナタエイゴウマイヨー」
周りがヘタなだけである。
最後は彼に握手を求められ、アメリカ人がよくやる肩と肩をぶつけての挨拶を行い、それぞれのホームへ別れた。
今振り返るとなんとなく、少し怪しい黒人であった。