新国立劇場公演
ドヴォルザーク『ルサルカ』 2011.12.6
          ノルウェー・国立オペラ・バレエのプロダクション

指揮 ヤロスラフ・キズリンク
演出 ポール・カラン
美術・衣装 ケヴィン・ナイト
照明 デイヴィッド・ジャック
合唱指揮 冨平恭平
音楽ヘッドコーチ 石坂宏
舞台監督 村田健輔
合唱 新国立劇場合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

ルサルカ オルガ・グリャコヴァ
イェジババ(魔法使い) ビルギット・レンメルト
王子 ペーター・ベルガー
ヴォドニク(水の精) ミッシャ・シュロミアンスキー
外国の公女 ブリギッテ・ピンター
森番 井ノ上了吏
料理人の少年 加納悦子
第一の森の精 安藤赴美子
第二の森の精 池田香織
第三の森の精 清水華澄
狩人 照屋睦



初めて劇場で観た『ルサルカ』、楽しんで参りました。
子供の成長物語に主眼をおいたと思われる演出と
音楽的にも、登場人物の設定的にもワーグナーのリングを彷彿とさせ
大変興味深かったです。

幕が上がるとすぐにドールハウスのような家が現れます。
ベッドの上で窓から月を見つめる少女、
傍らでは父親(乳母?)が少女に本を読み聞かせながら
ウトウトとしてしまっている様子。
そして、姿見の前に立った少女は鏡に映った自分に促されるように
鏡の中に入っていく・・・
(鏡の中の少女はイェジババかもしれない・・・)

冒頭のこのシーンにかなり影響を受けながら私は舞台を観ておりました。

少女が鏡の中に消えると景色は森と湖のシーンに変わるのですが
その景色もどこか箱庭的で森の木々は壁紙。

冒頭まもなく歌われる有名なアリア「月に寄せる歌」も
本の中に登場する王子に憧れている少女の歌であると思いつつ、
本=知識を得、親の庇護の元から逃れようとする少女のようにも思えたり・・

その後、魔法使いイェジババが現れて水から出て姿を見せろと言います。
(鏡を乗り越えた瞬間!)
<魔女>
さっさと身をほどくんだよ。
急いで私の小屋においで。
波よ、この子を放しておあげ。
この子が両足で土に触ることができるように!
 (ルサルカは飛び下りて、必死に身をよじりながら魔女の所にやって来る)
<魔女>
足よ!この子を運ぶんだ!
足よ!この子を支えるんだ!
ほほう・・・もう足は、歩き方を心得ているじゃないか!
      オペラ対訳プロジェクトより拝借

チェコ語で「自分の足で立つ、歩く」という言葉が自立するというような
意味合いも含むのかどうか分からないのですが、
愛の為だけではなく、独り立ちしたい、
イェジババの魔法にかけられる前から既に踏み出しているんだなと
私は思いました。

そして、イェジババが魔法の薬を作り終えて、ルサルカが人間に変わるシーン。
音楽がまるでというかそのままジークフリートのラインへの旅ですよね?

知識と、愛を知ったジークフリートが冒険の旅に出発する音楽!

そしてホルンの音と共に王子が登場し、ルサルカと出会うのですが、
その時のヴォドニクや水の精達のセリフを聴いていると、
まるでヴォータンやワルキューレ達、そしてルサルカはブリュンヒルデ・・
って感じてしまいますねえ・・

第2幕・・・音楽的にも凄く良かったのですが・・・
前日、睡眠時間が足りなくウトウトとしてしまって殆どわかりませんでしたw

第3幕は・・演出上の意図と言うよりも水と火の違いはあっても
やっぱりリングの世界に似ているな・・などと色々なセリフから
思いをめぐらしていたりしました。

それにしても今回の演出は
セットも照明も大変キレイでしたし、所々印象的なシーンも沢山ありました。
上記の写真の1幕冒頭のベッドをクルクルと廻しているシーンや
イェジババが魔法をかけた時のポップなスポットライト、
(ここではルサルカがクルクル廻ってた)
2幕は寝てしまったので分からないのですが、テレビ放送があるような
噂も耳にしているので放送されたら又、観てみたいと思います。

最後は又、冒頭の家のシーンに戻る訳ですが、
少女はヌイグルミ頭のような大きい人形を置いて、
人間のバランスに近い人形を窓の所に並べていたようで
一応それで成長を表したのでしょうか・・??

演奏はとても良かったです。
それからルサルカ役のグリャコヴァ
とても声量があって、求心力のある歌を聴かせるのですが、
どうにも私には歌唱が不安定に聴こえて、どこが気に入らないのか
考えながら聴いていたのですが最後まで分からずじまいでした。
対して、王子役のテノール、ペーター・ベルガーはとても安定した歌唱で
一箇所ファルセットを使った意外は良かったと思いますが、
いかんせんグリャコヴァの声が大きすぎてちょっと弱く感じてしまったので
又、機会があれば別の演目で聴いてみたいと思いました。

それから3人の森の精も良かった!