今年もお正月は箱根駅伝のTV観戦に明け暮れてしまいました(*^_^*)

すっかり恒例行事となった(自分にとって 笑)箱根駅伝ですが、以前はチラチラと覗いたり、結果をニュースで確認したりはしていたものの、これほど熱心に観戦することはなかったような気がします。


その駅伝に俄然興味が湧いたのは、三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を読んだことがきっかけでした。


風が強く吹いている/新潮社

¥1,890
Amazon.co.jp

寛政大学4年の清瀬灰二は肌寒い三月、類まれな「走り」で夜道を駆け抜けてい
く蔵原走に出くわし、下宿の竹青荘に半ば強引に住まわせる。清瀬には「夢と野
望」があった。もう一度、走りたい、駅伝の最高峰、箱根駅伝に出て、自分の追
求する走りを見せたい。その「夢と野望」を「現実」にするにはあと一年しかな
い。そしていま強力な牽引者が彼の目の前に現れたのだ。竹青荘は特異な才能に
恵まれた男子学生の巣窟だった。清瀬は彼らを脅しすかし、奮い立たせ、「箱
根」に挑む。たった十人で。蔵原の屈折や過去、住人の身体能力と精神力の限界
など、壁と障害が立ちはだかるなか、果たして彼らは「あの山」の頂きにたどり
つけるのか。 (Amazon紹介ページより)


この本を読んだ知人に「読んだ後に駅伝を見たらとても面白かった」と勧められ手にした1冊。


スポーツを扱った小説を読んだことはあまりなかったのですが、導入からぐいぐいと引きこまれ約500ページの厚さにも関わらずあっという間でした。

生き生きと描かれた登場人物。個性あふれる10人の駅伝メンバーのキャラクターの魅力的なこと。読んでいるとそれぞれが動く姿が見えるような立体感。随所で笑わせてくれつつも、それぞれが真剣に走ることに向き合っていく姿が丁寧に描かれていて。

「ありえない」設定でありながらも、彼らに心を寄せ応援せずにはいられなくなり・・クライマックスの駅伝シーンでそれぞれの心情が語られる独白は胸に迫り涙せずにはいられませんでした。


Amazonの感想レビューにも実際に選手経験のある方の感動したとのコメントが載っていますが、

構想6年、こつこつと取材を重ねた中で、選手の皆さんや駅伝に関わる方々の努力や情熱に触れた三浦さんの駅伝に対する敬意が作品から伝わってくるからこその感動もあるような気がします。


本の最後に寄せられている作者からの「謝辞」に取材や資料収集に関して力を借りた方への感謝の言葉があり、最後に

「作中で事実と異なる部分があるのは、意図したものも意図せざるものも、言うまでもなく作者の責任による」

と書かれています。


フィクションの小説ではありながらも、実際に箱根駅伝を体験した、取材協力をしてくださった方々に対して礼を尽くす三浦さんの言葉を読んで、駅伝が生きたドラマであることをあらためて感じました。


年末久しぶりにNHKBSで放送された書評番組「本の神様」で流れた夢枕獏さんと三浦さんの対談。


「書き終わったときの爽快感やカタルシスはないの?」と尋ねる夢枕さんに「全くない」と答える三浦さん。

「いつも書き終わってもこれでよかったんだろうかという思いが残って、やった!という気持ちにはなれないんです」との言葉がとても印象に残りました。


出す本が次々とベストセラーになり、映画化やドラマ化もされる人気作家であっても、いつも常に自問自答している姿。

それは、初めてこの本を読んだときに伝わってきたまっすぐで純粋な気持に重なるもので、あの読後感はここからきていたんだなあと思い、嬉しくなった一瞬でした。


作品を生み出す過程では山も谷もあり、苦しみのほうがきっと大きいのではないかと思いますが、そこから生まれる純粋な情熱が持つ力に触れることができる幸せを今年もまた感じました。


これからの三浦さんの作品がますます楽しみです(*^_^*)