世田谷文学館で開催されている 和田誠展「書物と映画」に行ってきました。

$The Best of Times



本の装丁や挿絵、舞台のポスター、自著である映画エッセイ、音楽に関わるものなどなど・・どこかで誰もが一度は目にしたことがある和田さんのイラスト。

そして、私にとって和田さんは、「映画の先生」でもありました。

本の虫で近くの図書館に入り浸っていた子供時代。
映画コーナーにあった本のどこかユーモラスなイラストに心惹きつけられました。
それが和田さんの映画エッセイ「お楽しみはこれからだ」でした。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ/和田 誠

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熱烈な映画ファンでもある和田さんが、まだTVのない時代に観た青春時代の名画の思い出を記憶にある字幕の台詞と共にイラストを交えて綴られたエッセイ。
どれもがリアルタイムでは観たことのない映画ばかりでしたが夢中になって読み、そしてどの映画もすっかり観たような気になってしまったのは、和田さんの映画を思う幸せな文章に惹きつけられてしまったからかもしれません。
特にエッセイのタイトルになっている「お楽しみはこれからだ」の字幕が使われた映画「ジョルスン物語」への和田さんの思い入れの強さは半端ではなく(笑)
山田宏一さんとの共著「たかが映画じゃないか」の中で、「最も数多く観たこの映画がどうしてそんなに自分にとって素晴らしい作品なのか」を山田さんにこの字幕を含めてアツク語っている箇所は、その情熱に圧倒され、強く印象に残りました。
児玉清さんも大好きな本を語るときのその情熱は活字を飛び越えて、こちらに向かってくるような熱さがありましたが、そういう好きなものを語るときの純粋で熱い情熱に最初に触れたのが和田さんだったような気がします。

私にとってはバイブルのような「お楽しみはこれからだ」を始めとする映画エッセイの数々。
その原画を間近で見ることができるなんて。まるで夢のような空間でした。

映画はもちろんのこと、丸谷才一さんや谷川俊太郎さんの本の装丁、村上春樹さんとの「ポートレイトジャズシリーズ」、そして井上ひさしさんとのご縁でのこまつ座のポスター。「兄おとうと」や「父と暮らせば」「太鼓たたいて笛ふいて」など観た作品のポスターの版下など貴重な資料にもうひとつの舞台裏に思いを馳せたり。

和田さんの事務所の書斎を実物大の写真にして同じように展示してあるコーナーで、エッセイの中でお好きだと言っていたジェーン・フォンダの写真集が2冊あるのを発見して、思わずニヤニヤしてしまったり。

毎日新聞で14年連載されていた本を題材にしたヒトコマ漫画「本漫画」のユーモラスな絵に吹き出しそうになったり。(これはいつか手元に置きたい1冊です)

多才な和田さんのお仕事の数々。きっと展示されているのはほんの一部分だと思うのですが、垣間見ることができて幸せでした。

こちらはその和田さんの思い出の映画「ジョルスン物語」のタイトルバックに使われていた
「Let me sing and I'm happy」(歌わせてくれれば私は幸せ)





歌わせてほしい。おかしな歌であなたを笑わせることができたら私は幸せ。悲しい歌であなたを泣かせることができたら私は幸せ。歌であなたを席から立ち上がらせたい。あなたがの靴がリズムを踏むようにさせたい。故郷の歌を歌ってあなたをホームシックにすることができたら私は幸せ。


和田さんが音楽エッセイ「いつか聴いた歌」で書かれていた訳です。
これを読んだだけでいたく感激してしまったことを思い出します。
すでに宝塚との出会いでエンタテインメントの世界に引き込まれてはいましたが、和田さんのイラストと愛情あふれる文章でショービジネスの楽しさ厳しさ素晴らしさをより深く知ることができたような、そんな気がします(*^_^*)