今年の2月、私の数少ない映画情報源(^^ゞ週刊STの「STシネ倶楽部」で紹介されてからずっと見たかった映画「英国王のスピーチ」。

やっと鑑賞することができました♪

 

公開日を考えるともう終了していてもおかしくはない時期ですが、ロイヤルウェディングやGWがあったので、上映期間がのびたのでしょうか。

延長してくれてありがとう!とTOHOシネマズさんにお礼をいいたくなってしまうような心に残る作品でした。

 

 

The Best of Times

 

多くの方がご覧になっていると思いますが、解説と簡単なあらすじを・・。

 

解説: 吃音(きつおん)に悩む英国王ジョージ6世が周囲の力を借りながら克服し、国民に愛される王になるまでを描く実話に基づく感動作。トロント国際映画祭で最高賞を受賞したのを皮切りに、世界各国の映画祭などで話題となっている。監督は、テレビ映画「エリザベス1世 ~愛と陰謀の王宮~」のトム・フーパー。ジョージ6世を、『シングルマン』のコリン・ファースが演じている。弱みや欠点を抱えた一人の男の人間ドラマと、実話ならではの味わい深い展開が見どころ。

 

あらすじ:幼いころから、ずっと吃音(きつおん)に悩んできたジョージ6世(コリン・ファース)。そのため内気な性格だったが、厳格な英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)はそんな息子を許さず、さまざまな式典でスピーチを命じる。ジョージの妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、スピーチ矯正の専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)のもとへ夫を連れていくが……。

(Yahoo!映画より引用)

 

感想はネタばれありですので、未見の方はご注意くださいませ。

 

人前に立たなければならない立場でずっと吃音という症状を抱えてきたジョージ6世。国王として自分が適任であるのか悩み、自信が持てず不安に襲われても、それを人前では見せることはできない。伝統を継承しなければならない重圧。先人たちを尊敬しながらも、その偉大な姿に負けそうにもなる。

英国王室の話ではありますが、責任ある立場に立たなければならない人であれば、大なり小なりどこか同じような孤独と苦しみがあるのではないかと思います。

 

そんなジョージ6世を王として奉ることもなく、対等な立場で接し、トレーニングをしていく言語療法の専門家ライオネル。反発しながらも、だんだんと心を開き信頼していくジョージと、彼をひとりの人間として開放させるべく接しながらも、胸の内では国王としての資質を認めそれを引き出したいと願うライオネル。

この2人の関係がとても魅力的でした。

 

表舞台に立つ人には必ず側に支えてくれる存在があり、その人がいなければ中心に立つ人は光輝くことはできない。

その人の才能を引き出し、自信を与え、信頼し、安心できる人。時にはコーチであったり指導者であったり教師であったり。

表舞台にいる人を見るたびに、私はいつもその後ろにいる人の姿を見てしまいます。

決して光があたる場所には出てこないけれど、その影にいる人もその人の一部なんだなと。

そしてそのような役割の人にいつも心惹かれてしまうのです。

 

ウエストミンスター寺院での戴冠式の練習で、王座なんてたいしたことはないとわざと言ってみせるライオネルに「私は王としての言葉を持っている!」と自分の心の底にある本当の気持ちが湧き出る場面。

映画「今を生きる」で内気な生徒がロビン・ウィリアムズ演ずる型破りな教師によって眠っていた言葉を発する感動的な場面を思い起こしました。

人の才能を引き出すことができる人もまた、偉大な人と同じ大きな力があるんだなと。

 

映画のクライマックスは、第二次世界大戦開戦を告げる世紀のスピーチ。

関係者が固唾を飲んでラジオに聴き入る姿は臨場感があり、自分もラジオから流れている声を聴いているかのような錯覚に陥りました。

緊張しながら始まったスピーチは、ライオネルに見守られながら、だんだんと国王本来の言葉によって力強いものになっていき、終わった瞬間の万来の拍手と、夫の症状と共に生きてきた王妃エリザベスの涙する姿に、映画を見ながらずっとどうなるんだろうと一緒に見守ってきた時間が重なって、胸がいっぱいになりました。

 

流暢に話せるテクニックも大事かもしれないけれど、本当に自分の心から出た言葉だからこそ、そしてそれは自分と向き合い克服した人だからこそ、多くの人の心に響く演説となったんだなと感じました。

 

スピーチが成功したその後に、ずっと愛称の「バーディ」で呼んできたジョージ6世に初めて「国王陛下」と呼ぶライオネルの姿には、自分の役目を果たした誇りと国王ジョージ6世への敬意があり、ここも忘れられない場面です。

 

ジョージ6世のライネルへの感謝とライオネルの国王への敬意。それは友情でもあり、それ以上に強く大きなものであったような気がしました。

 

最後になってしまいましたが、俳優陣は皆さん本当に上手。

イギリスの俳優さんはスクリーンの上でもどこかに演劇の香りを感じるのですが、王族を演じても説得力があるのはそんな歴史があるからかもしれません。

コリン・ファースはもちろんですが、ライオネルを演じたジェフリー・ラッシュ。素晴らしかったです。

彼にも助演男優賞をとってほしかったな。

こういう俳優さんがいることで、作品の奥行が深くなることをあらためて感じました。

 

自らも吃音症であるディヴィット・サイドラーの脚本のリアリティーと、監督トム・フーパーの丁寧な演出があわさって、心の深いところに響くような幸せな作品でした。