1/28(金)で17年の歴史の幕を下ろした恵比寿ガーデンシネマ。

 

昨年閉館のニュースを聞いたときに感じた寂しさは言葉では言い表せないものでした。

 

大手の映画館と違って、ひとつの作品をこだわりを持って上映してくれるミニシアターは、じっくり味わう映画を教えてくれた大切な場所。

上映される映画にも映画館の個性があり、映画館と観客がともに映画を楽しみ応援していく温かさがあって、そこで観た映画の数多くはいまでも心に残っています。

 

そんなミニシアターのひとつ恵比寿ガーデンシネマがなくなってしまう・・。

 

最近は映画館に行く回数がめっきり少なくなってしまっているのですが、これは何としても駆け付けなければ・・と最終日の前日に、最後の映画を観に行ってきました。

 

窓口の前にある挨拶の言葉に本当に終わってしまうんだなあと寂しさが。

 

 

The Best of Times

 

 

中に入ると、これまで上映した映画のポスターやパンフレットが飾ってありました。

そのとき観た映画やそのときの思い出が蘇ってきて、懐かしさで胸がいっぱいに。

 

「ロッタちゃんのはじめてのおつかい」

子供の頃、大好きだったリンドグレーンの児童小説がどのように映画化されるのかドキドキしながら観に行ったなあ。

可愛くてマイペースなロッタちゃんが、スウェーデンののどかな風景や、北欧独特の美しい家具の色彩などとともに思い出されます。

 

The Best of Times

 

ポスターはイラストですが、映画は実写版です(^^ゞ

 

「ブロードウェイと銃弾」

この映画館で初めて観た大好きなウッディ・アレンの映画!

恵比寿ガーデンシネマはウッディ・アレンの映画を数多く上映してくれた映画館でしたが、中でもこの作品は私の中ではダントツの1本です。(舞台が好きな方は必見♪)

 

 

The Best of Times

 

私同様に、映画館のロビーでは忘れないようにと写真を撮っている人や、パンフレットやポスターを眺めて思い出を語っている人たちがいて・・その光景を目にするとこの映画館を愛する人がこんなにいるんだなあと。

そしてそういう場所がなくなっていくことの切なさを感じずにはいられませんでした。

 

昨年末に、 「相次ぐミニシアターの閉館」  という記事を新聞で目にしました。

大手シネコンの台頭で、動員数が減ってミニシアターがどんどん閉館していっていること、

そして記事の中には映画関係者の談として、”今の若者は映画を芸術として見ることが苦手で「泣ける」「笑える」といった単純で強い言葉しか届かない”とありました。

渋谷のミニシアター「ユーロスペース」支配人の「窓口で学生証を見る機会が少なくなった」との言葉も。

 

新聞に書いてあることが全てだとは思いませんが、そのような傾向を感じることは時々あります。

 

 

確かに、「泣いて」「笑って」すっきりすることも大事だけれど、きっとそれはひとときの泡のように消えてしまって後には残らないかもしれない。

 

でも人はその感情だけで生きているわけではなく、笑っていても心の中で泣いていたり、どんなに優しいひとにも自分で気付かないドロドロした感情が潜んでいたり。。それが生きていることでもあるし、全部をひっくるめて人間でもあると思うのです。

そして、そんな心の機微を感じること、感情を実感することで、前進できることもあるのではないかなとも。

 

 

わからないことは不安でもあるけれど、年月を重ねたときにあのときわからなかったことがすとんと心に落ちる瞬間。心に残っていたものが育ち、熟成して、自分の前に現れたときに、あのとき見ていてよかったなと思えるのではないかなと思うのです。そしてその残ったものに救われたり、元気をもらったりすることもきっとあるのではないかと。

 

 

自分のために時間を100%使える学生時代。

色々な感情に立ち向かうのは時にはしんどいこともありますが、それに対峙できる体力も時間も沢山ある貴重なとき。商業ベースの映画にはないじっくりした時の流れや心の動きを感じることができるミニシアターの作品にも是非目を向けてほしいなと思います。

 

 

消えてしまうものだけでなく、残っていくものも大事にしてほしい。

わからないことを想像すること、思いをめぐらせること。その時間は決して無駄ではない・・そう思います。



 

 

 

恵比寿ガーデンシネマでの最後の鑑賞作品は、

大好きなウッディ・アレン40本目の作品「人生万歳!」

 

 

The Best of Times


 

ウッディ・アレンらしい大人の風刺と皮肉と(笑)ユーモアにあふれた作品で、あっという間の90分でした。

(この映画の感想はまたあらためて・・・)

 

 

映画が終わっても、名残惜しそうにまだロビーにたたずんでいる人の顏を見ながら・・これが「劇場」なんだなとあらためて感じました。

文化は作り手が一方的に発信するのではなく、受け手と共に育つもの。

その場所である「劇場」の灯が消えていきませんように・・・と願いながら、映画館を後にしました。

 

 

恵比寿カーデンシネマさん、沢山の思い出をありがとうございました!

 

 

末端の観客ではありますが、ミニシアターの灯が消えないように応援し続けていきたい・・と思っています。