会場では、石井さんの作品とともに、TV出演されたときのインタビュー映像も流れていました。
このインタビューの内容が、とても素晴らしく心に残るものばかりだったので、ここで少しご紹介したいと思います。
1997年に放映された「NHK ETV特集 ~21世紀の日本人へ~ 子どもの本は家族の記憶」。
当時90歳だった石井さんのしっかりとした語り口と、深い愛情と強い情熱をもったまなざしでこどもの本について語る姿はとても美しく、画面に見入ってしまいました。
番組冒頭での「児童文学とは?」との問いに「暖かい世界」と答える石井さん。
子どものころに出会った本を思い出すたびに暖かく優しい気持になれるのは、このような心でその本を創りだしてくれていたからなんだなあとあらためて感じました。
そして「子どもが育っていく過程で何が自分にとって美しいものか、楽しいものかを小さいうちにつかんでほしい」と。「本は記憶に残っていくもの。子どものころに読んだ本でその後の人生の美意識や生きていく方向性も決まっていくのではないかと。その時その時の年齢に達したときに記憶に残る、心の錨になるようなものが必要なのではと思います」
この言葉にも深く頷いてしまいました。石井さんを通して出会った本や言葉は私にとって心の錨になって今もずっと残っていると実感しました。
「これからの児童文学について」との問いに
「何よりもストーリー(お話)の構築が大切」と。
「今の日本のお話は構築が欠けていて、起承転結もなく、背景がわからないうちに主人公が動き出すようなものが多くなっているのでは」
「お話が絵に描けるような、話す声が聞こえてくるようなものであることが大切」
これは児童文学だけではなく、小説や舞台・映画の脚本にも通用する言葉ではないかなと思いました。
特に印象に残ったのは、
「大人は色々な経験があるので、ついさびしいとか悲しいという言葉を使いたくなるけれど(お飾りが多くなると表現されていました)それは読者が感じるもの、心に起こるものであって、作者が使わなくてもいいものなんですね」という言葉。
とても考えさせられました。確かに「さびしい」「悲しい」と書いてあると気持が固定されてしまいがちですが、色々な気持が自然に自分に沸き起こること、それが想像力を育てることなのかもしれないなあと。
この他にも石井さんの残した暖かい言葉の数々が会場にあふれていたのですが、
一番強く深く心に残った言葉を。
こどもたちよ、こども時代をしっかりとたのしんで下さい。
おとなになってから、老人になってから
あなたを支えてくれるのは
こども時代の「あなた」です。
物心ついて初めて出会った世界、その扉をあけてくれたのは石井さんの本でした。
この言葉のように、そこで出会ったものに、今でも私は支えられています。
石井さんの美しく、優しく、暖かい日本語で育つことができた幸せに心から感謝しています。
これからもずっとずっといつまでも石井さんの本が、言葉が、読み継がれていきますように。
展示会の図録とチケットです。
この展覧会の中身がぎゅっとつまった内容の濃いものでした。
チケットはポスターと同じく切手になっていて、可愛いデザインに嬉しくなりました。
チケットの中で微笑む100歳の石井さんは、今日も私に元気と勇気を与えてくれています。