今日も寒い1日となりました。

幸か不幸か簡易ギプスの私は出歩けず(^^ゞかなり遅ればせながら先月観た舞台などをふりかえってみようかなと思います(だいぶ記憶は薄れてきていますが・・汗)


1月に観た最初の舞台は「ファニーガール」でしたが(感想はコチラ

2本目は加藤健一事務所30周年記念vol.74「シャドーランズ」 (1/13 本多劇場にて観賞)


この戯曲をもとにした映画「永遠の愛に生きて」 が好きだったこと、春風ひとみさんのお芝居が観たかったことなどから、気になる舞台ではあったのですが、他の舞台の観劇予定と重なっていたこともあって迷っていました。

そんなとき1/6付の日経新聞夕刊に加藤健一さんのインタビューが。

「仕事 待つだけではダメ」というタイトルがついたその記事には、所属していたつかこうへい事務所が解散し、「寄らば大樹の陰」がなくなってしまったこと、外からの依頼を待つだけでは本当にやりたい役とズレがあり、自分でプロデュースすることを考えたことなどが書かれていて、その記事から30周年に至るまでの決して平坦ではない道のりと舞台俳優としての強い情熱が伝わってきました。

これを読んで、「やっぱり行こう!」と決心。この日は「ファニーガール」のマチネを観劇予定だったのですが、日程がそこしかなく、久しぶりのダブルヘッダーとなりました(*^.^*)


児童小説「ナルニア国物語」の作者イギリス人C.S.ルイスと子連れのアメリカ人女性でのちに彼の妻となるジョイの出会いとその後を描いた物語で、実話がもとになっています。


ルイスを演じる加藤健一さん。本多劇場で加藤さんの舞台を観るのは本当に久しぶりですが、台詞の間合いや深さ、表情など積み重ねてきた舞台のキャリアを感じました。

私の中では映画でアンソニー・ホプキンスが演じたルイスのイメージが強く、不器用で融通が利かず、ちょっと理屈っぽいイギリス人でなかなか自分の感情をあらわにできず、だけれども純粋な部分があって・・という記憶があったので、加藤さんのルイスはちょっと洒脱すぎるような印象があり、初めは若干の違和感があったのですが、終盤でのジョイの息子とのやりとりと、自分の悲しみと対峙し切々と語るその台詞の説得力。思わず涙がこぼれました。加藤さんの役者としての力に圧倒された瞬間でした。


その妻となるジョイを演じた春風ひとみさん。

彼女のお芝居を観たいと思ったことがこの観劇の一番のポイントだったのですが、本当に素晴らしかった!!!

まず登場して台詞を喋りだした瞬間に、アメリカ人女性に見えてしまうその立ち姿。(立っているだけで自然に外国人に見えてしまうというのは、春風さんだけでなく宝塚のOGにいつも感じることなのですが、宝塚というある意味最も虚構な世界で洋物の芝居を数多くやっている経験は非常に大きいのではないかなと思います。)

今までイギリスの大学という狭い社会の中で生きてきたルイスがとまどいながらも惹かれていくジョイの奔放さ、知性、女性としての強さと弱さ、全てが春風さんのお芝居の中に生きていて、ルイス同様ジョイに惹かれていく自分を感じました。

宝塚時代からお芝居の上手さには定評があった春風さんですが、ここまでじっくり演技を見たのは久しぶりで、あらためてその実力に脱帽。

これだけの実力を持ちながらも、ミュージカルの舞台では、どうしても出番が少ない役になりがちなのが本当に残念です。歌えてお芝居ができる彼女のような人がメインの舞台をもっともっと観てみたい。東宝版「ミーアンドマイガール」のマリア公爵夫人などは是非彼女にやってほしい!と切に願うもののひとつです。

今年6-7月には彼女のひとりミュージカル「壁の中の妖精」が3年ぶりに上演されるとのこと、絶対に行きたいと思っています♪


ルイスの兄ウォーニーを演じた斉藤晴彦さん。

最初は奔放なアメリカ人ジョイを受け入れられない堅物なイギリス人気質と、だんだんジョイを好きになる暖かさがほどよく感じられて、さすがだなあと。飄々とした風情が印象的でした。


大学の同僚ライリー教授の新井康弘さんや、牧師の佐藤誓さんも好演でしたが、子役の石田麻織恵さんが自然に男の子になっていてルイスとのやりとりが心に残りました。


セットはルイスの書斎がメインですが、その中央にあるタンスがナルニア国物語のタンスを開ける始まりと繋がっていてシンプルだけれどもよくできているなあと。光りの使い方も効果的でした。


映画はイギリスのロケーションなども美しく好きな作品のひとつですが、もととなるこの戯曲からはルイスとジョイの魂での結びつきの深さをより感じられて、いっそうこの作品が自分にとって大きなものになりました。


良質な作品を上演し続けてくれる加藤健一さんに心からの感謝を!ロビーに貼られたこれまでの公演のポスターに、30年続けてきたその情熱を感じました。心から敬意を表したいと思います。

いいお芝居を観ることができた、みせてくれた、キャストの皆さんにも心からの感謝を♪

観てよかったと心から思った舞台でした。


追記:普段めったにパンフレットは買わないのですが(値段も高く場所もとるので(^^ゞ)この作品のパンフレットはなんと500円!小さくてカバンにも入りやすいサイズ。思わず買ってしまいました(*^.^*)

巻末に加藤さんへのインタビューが載っているのですが、「もし宝くじで3000万当たったら?」の問いに「これは危険だなって思ってやれない芝居を一公演やってみたい」 「もし3億円当たったら?」の問いには「もうひとつ稽古場を作りたいですねえ」本当に舞台が好きなんだなあと思いました(*^.^*)