「異議あり!」の決まり文句でおなじみの人気ゲームソフト「逆転裁判」との初のコラボレーションが話題だった宝塚宙組公演。幸運なことに3月2日の千秋楽を観劇することができて、その感動を記事にしようと書きかけていた先週。
衝撃のニュースにどうしてもその先を書くことができず・・・・色々考えて今の気持を書きとめておこうかなと思いました。
先週の宙組次回公演集合日に発表された退団者の名前に、しばし立ち直ることができませんでした。
七帆ひかるさん。将来の宙組を背負って立つ人だと信じていたので、あまりにももったいなくてあまりにも残念で、事実だとわかったときの喪失感は言葉では言い表せないものでした。
私は宙組再演の「バレンシアの熱い花」から久しぶりに宝塚に復活したので、七帆さんの舞台も沢山観ているわけではないのですが、何と言っても印象的だったのが、梅田芸術劇場「雨に唄えば」の映画監督ディクスター。映画版では味のある脇役系の役者さんが演じていた印象が強かったのですが、わがままなスターや映画会社に振り回される映画監督を実にユーモラスに演じていて、全国ツアー「バレンシア・・」の役代わりロドリーゴの颯爽とした姿のイメージしかなかった私は、「スター路線の人なのにこんなお芝居ができるなんて!」とビックリ。お芝居の間やテンポもよくて、ただただ感心しました。
今回の「逆転裁判」でのクールな検事マイルズ・エッジワースも、格好よさと同時にナルシストなキャラのおかしさも醸し出されていて、素晴らしかった。個人的な印象ですが、台詞の言い回しや声の感じが、昔好きだった久世星佳さんに似ているなあと思ったりもしました。
お芝居が上手だと、ともすれば地味になってしまいがちな中、華があってスターとしての力もあった七帆さんは本当に貴重な人材だったと思うので、その点でも本当に残念です。このようなタイプの人が中心になった舞台はどんなだったろうと叶わなかった可能性に思いを馳せてしまいます。
また、私は蘭寿さんのファンなので、全く違う持ち味ながら2人はお芝居の波長が合うと感じていたので、もっと2人が絡んだり対峙したりするお芝居が観てみたかったことも残念な思いのひとつです。お互いにないものを引き出してより相手を輝かせることができる2人だったのではないかなと思っています。
応援している人もいつかは去っていく。それは宝塚の宿命でもあります。それでも、応援していた人と一緒に舞台に出ていた共演者や若手スターにも愛着を感じ、この人達がいつか応援した人が去った場所でまた輝いてくれるだろう、そんな思いを託すことができるのも宝塚だと思うのです。そうやって受け継がれてこそ95年続いてきたのではないかと思うのですが、最近の宝塚は自らその流れを断ち切っているかのようで、長年のファンとしては何とも切なく寂しい思いでいっぱいです。
退団は本人が決めることですし、宝塚ファンはそれを受け入れるしかありません。今回の発表に「異議あり!」と言ってみてももうどうすることもできません。今の状況を受け止めて応援していこうとしている沢山のファンの方の切ない気持が無駄になることがありませんように。確かに厳しい世の中ではありますが、それでも宝塚は総合芸術であり、そこに出ている人たちは皆感情を持った人間である舞台人です。舞台に立っている人が夢を見られなければ、観客も夢を見ることはできません。どうか未来に夢や希望を持つことができる宝塚でありますように。
今をどうにかごまかすのではなく、未来に夢を持てる今を作ることができる宝塚であってほしいと心から願っています。
退団される方たちにとって次回の公演が充実したものであることを願って・・・