私が子どものころ、父がよく唸っていた浪曲にこんなのがあった。
おなんどらしゃの なががっぱ にだんはじきの しぶじゃのめ つまがけなしたる たかあしだ
あとにつづくはおおいしの ふところがたな てらにしやだゆう きたるはなだいの なんぶざか
いつもやっているから、意味も分からずにこの冒頭の部分だけは覚えてしまった。
後年、これが明治・大正時代の浪曲師・桃中軒雲右衛門の『南部坂雪の別れ』であることを知った。
漢字交じりで書くとこうなる。
御納戸羅紗の 長合羽 二段弾きの 渋蛇の目 爪掛けなしたる 高足駄
後につづくは大石の 懐刀 寺西弥太夫 来たるは名代の 南部坂
大石内蔵助が討ち入りの日の前日、 主君浅野長矩の妻だった瑤泉院を訪ねる下りである。
大石の装束を詳しく描写しているが、その通りの画像はないものかと探してみたが、ぴったりなのは見つからなかった。(以下の画像はネットからお借りしました)
↑これは映画の一場面だろうけれど、長合羽を着てないからダメ。
↑これは歌舞伎だけど、惜しいかな高足駄に爪掛けがなされていない。
↑御納戸色というのは、この青っぽい色。二段弾きっていうのは、傘の開きが二段構えになっていること。
懐刀の「寺西弥太夫」というのは四十七士には存在しない。生き残った足軽の寺坂吉右衛門のことであろう。まあ、もともとこの南部坂の一件は史実ではないんだけれどね。
↑寺坂吉右衛門の墓。これは去年、泉岳寺を訪ねた時に撮ったもの。
三波春夫さんの『桃中軒雲右衛門とその妻』が大変よかったので、アップしておきます。
氷川きよしの声を聴いていると、三波春夫から大きな影響受けたんだろうなって感じます。
でも、未だに三波春夫を超える演歌歌手は出てきていないんじゃないかなあ。
声はクラシック歌手以上に素晴らしいと私は思います。
桃中軒雲右衛門より上手い!!!
ありがとうございました。