現在、国会では平成30年度予算案の衆院通過させるされないで与野党がせめぎ合いを見せています。
厚労省による働き方データの設問が適切ではなく、収集したデータとしては不具合であった事から、野党は再調査を求めて予算案通過を阻止している状況です。
その国会質疑の中で、野党が特段に問題としているのが、「裁量労働制の職域拡大は、残業が増えて働かせ放題が拡大するもの」として「残業代ゼロ法案」だと反対していますが、実際はどうなのでしょうか?
裁量労働制は、そもそも労基法の法定労働時間との関わりがベースにあり、法定労働時間である1週間に40時間・1日に8時間を超えた場合には、時間外手当を支払うことになります。
裁量労働制は、労使協定で定めた時間を労働したと「みなす」制度であり、
1日9時間と協定すればそれ以上の労働をした場合も、それ以下の場合も一律9時間の労働をみなすこととなります。
この場合、時間外に関して、あくまで労基法の法定労働時間8時間を超えた分(1時間分)は時間外手当を支払うことになります。
裁量労働制を導入することで、残業手当を支払う必要はない、あるいは深夜・休日労働も支払う必要はないと勘違いされるケースがありますが、法定労働時間を超えた場合や深夜・休日労働などの場合も支払う必要があります。
また、労使協定はあくまでも会社側と従業員側との協定であり、時間外労働や休日・深夜等の業務は労基法第4章の法定労働時間および労働時時間の算定が適用されるため支払わなければなりません。
ここが重要な部分だと思うのですが、国会の場でこの様な説明がない事から、野党による「裁量労働制は働かせ放題」という印象が植え付けている事になっています。
政府側もきちんと説明すべきですが…
次に裁量労働制で雇う方も簡単にはいかないのが裁量労働制です。
雇う方は、対象とする業務自体の慎重な検討が必要となります。
経営者や管理者の具体的な指揮命令を受けずに、時間配分などの自己決定ができる業務であるかの見極めが重要となります。
みなし労働時間を何時間にするのか。
「裁量労働制」では、従業員の実際の労働時間に関係なく、労使協定で定めた時間だけ働いたものとするとされています。
1日のみなし労働時間を9時間と定めた場合、8時間を超える1時間分について時間外手当を支払うことになります。
このように、みなし労働時間を何時間にするかによって従業員の収入が決まってしまうため、決定にあたっては、充分な検討が必要となります。
具体的には、過去(最低1年間)の時間外労働の実態を調べて、その平均値に近い時間にする必要があると思います。
次に仕事量のばらつきを極力抑える必要があります。
従業員一人一人についてみなし労働時間を定めるのではなく、例えばある部署のシステムエンジニアについては1日○時間というように定めると、同じみなし労働時間の従業員の間で分配される仕事量に差があっては不公平になってしまいます。
職場内の仕事量の配分の見直しが重要になります。
休日勤務や深夜勤務は原則として禁止する。
まわりに人がいないことで仕事に集中できるといった理由で、休日や深夜に仕事をしたいと考える人がいますが、裁量労働制の場合、休日勤務や深夜勤務はその対象とならず、
休日勤務手当や深夜勤務手当を支払う必要が出てきます。
よって、みんなが働いている時間にあまり働かず、休日や深夜に働くという人がいた場合、その人の収入が他の人より多くなってしまい不公平となります。
従業員を公平に評価できる管理者の教育が必要です。
時間の管理を本人の裁量に任せる以上、業務の進捗度を管理することが重要になります。
従業員ごとの目標設定、フォロー、アドバイスを与え進捗度を管理するなどの制度が確立され、実際に機能しているかなどの管理者(上司)サイドの能力評価も重要となります。
成果をきちんと評価できるシステム作りも必要です。
「裁量労働制」では、従業員に対する評価の対象となるのは主に仕事の成果が中心となります。
そこで、仕事の成果をきちんと評価できるシステムが不可欠となり、評価と報酬の仕組みが賃金制度として整備されているか、裁量労働制の場合、これが一番問題になると思われます。
雇われる側もこのような事を知っていなければ労使交渉もできません。
「従業員の裁量にゆだねる必要性が高まっている」とする経営者の意見の割合、「労働時間ではなく成果で評価してほしい」とする従業員の意見の割合が、ともに統計上で高い比率を占めているといわれているそうです。
現在、働き方に関する社員の関心も高まっており、裁量労働制の導入に向けて検討中の企業も多くなって来ているそうです。
裁量労働制とは、働く側の「働きがい」を引き出す、そのための評価制度の充実、公平な従業員の評価等のための管理者教育の徹底が必要となります。
何より、仕事の効率化=生産性の向上を達成し、且つ従業員のモチベーション向上に繋がることが大切なのです。
以上から、現在の国会でのやり取りや報道の仕方で見えない部分が洗い出されたのではないでしょうか?
そこで、裁量労働制の何が問題なのかと言えば、運用する企業側の問題であるの一言。
そこで法的罰則を厳しいものにするように法改正をするのが国会の場であり、さも「裁量労働制は際限ない残業で過労死する」かのようなレッテル張りで働き方改革を遅らせるのは、果たして国民にとっても国益にとってもいい方向なのだろうかと?
以下、朝日新聞の過去の労働問題であるが、こういう場合のために法的罰則を厳しくするのが本来の国会での審議なのではないかと思うのです。
本社社員5人、上限超す残業 社内調査で新たに確認
朝日新聞 2016年12月15日04時01分
http://www.asahi.com/articles/ASJDG6F36JDGULZU00Z.html
※現在はリンク切れ
朝日新聞社は、中央労働基準監督署(東京)から社員1人の長時間労働について是正勧告を受けたことを踏まえ、同様のケースがないか社内調査した結果、新たに5人について労使協定の上限を超える違法な残業のケースを確認した。
本社は、同労基署に報告する。
法令で労働時間を把握するよう求められている社員について今年度分の勤務状況を調べた。
5人はいずれも東京本社社員で、製作部門2人、広告部門2人、財務部門1人。
健康への影響や賃金の不払いは発生していない。
製作部門の2人は、いずれも今年7~8月、リオ五輪の現地スタッフとして取材センターなどで機器の設営や出稿の支援を行った。
この間の法定時間外労働が上限(83時間)を、1人が7月が38時間50分、8月が64時間超過。もう1人も7月が25時間50分、8月が52時間50分上回った。
他の社員3人は、6~10月の間の1カ月間、超過時間がそれぞれ8時間、19時間、11時間30分となった。
これとは別に、裁量労働制を導入している編集部門で、社員の健康確保のためにある出退勤記録について、管理職が部下に無断で短く書き換えていた。
このケースについては、管理職向け研修などの対策を講じており、同労基署は是正勧告の対象としていない。
本社管理本部は「社内調査で別の事案が見つかったことを重く受け止め、再発防止に努めます」としている。




