カール・ツァイスのプラネタリウム | stupid girl's peaceful life

カール・ツァイスのプラネタリウム

小さいころ、父親とばっかり行動していたワタクシの

一番うれしいお出かけは

プラネタリウムでした。


その昔、大阪の四ツ橋というところにあった

「大阪市立電気科学館」というところ。


父の仕事の関係で、しょっちゅうここに行くことがあったようで

時々 私を連れて行ってくれました。

なんと行ってもここに行くとうれしいのは

プラネタリウムが見られること。


父の仕事が終わるまで、私はこの上映室で

何度も何度も繰り返して上映を見ていました。

入口にはいつも同じおっちゃんが立っていました。

おっちゃんは私が行くと

「おお。また来たか。ほな中はいり。」と

行って扉を開けてくれます。



一歩中に入るともうそこは子供の私にとっては

本当の宇宙のような別世界でした。

真っ白な円形のスクリーンが天井一杯に張られ、

円形の部屋のど真ん中に


大きな大きな黒いアリのような形の

投影機がどっしりと構えているのです。


ドイツのメーカー カール・ツァイス社製のこの

巨大アリにはたくさんの丸い穴があいており、そこがおそらくレンズに

なっているのでしょう。

その姿はとにかく未来からやってきた生き物!

この巨大宇宙アリこそ私を宇宙まで連れて行ってくれる

いわば宇宙船そのものでした。

そして、大きな背もたれの椅子に腰掛けて

上映が始まるまで待ちます。



上映が始まると、部屋が暗くなり、

大阪の夕暮れのシーンから始まります。

赤い太陽が西の空に沈み、

一番星から順番に星が投影されていくのです。

そしてここはそのBGMとしてワグナーやルビンシュタインなど

のクラシック音楽がかかっており、その音楽と星の姿

があいまって、私にとっては本物の宇宙そのものでした。

何度見てもその星の美しさに感動し

普段は10分でさえ座ってじっとしていることもできない私が、

じっと45分間空(天井)を見たまま座っていました。


やがて上映時間の終わりが近づくと

決まって流れていたのが

ロッシーニのウィリアム・テルの序曲から「静けさ」。

この曲が流れてくるともう夜明けです。

すっかり宇宙に吸い込まれていた私はそこで

ようやく「あ。お父さんどうなったかな。」と

われに返り、扉が開くと父の姿を探しに展示室に

行きました。


今では国産でもすばらしい投影機が作られ、

このカール・ツァイス社製の投影機は

電気科学館の閉館とともにその役目を終えました。


数年前に仕事で行った移転した新しい科学館の

片隅に展示されている姿を見ました。

あのとき、上映前にたくさんの子供たちが

憧れの目で見上げていたあのツァイスが

ぐっと小さくなって

ぽつんとそこにいました。


仕事の合間だったので、ほんの少しの間にそばに

行っただけでそこを離れなくてはならなかったのですが

こいつは本当にすばらしい機械なのになぁ・・・と

なんとも切ない気分になりながら後にしました。




そういえば、あのころ

大人になればこのツァイスを自分のものにするのが夢だったなぁ。