しゃべる犬
ワタクシの小さいころ過ごしていた家は
田舎の古い古いおんぼろ旧家で、
敷地の中に、祖父母の住む母屋と
私たち家族のすむ家がありました。
そしてその間に大きな庭がありました。
庭は手入れをしなくなってからずいぶんとたつため
すでにジャングルの様相。
小さな子供だけでは奥地のほうに何があるのかわからず
ちょっとした探検ごっこも可能なほどでした。
その庭で、私はいつも姉とその友達の後ろをついてまわり
一緒に遊んでもらうのに必死でした。
当時私は、ずいぶんと離れた場所にある母方のじーさんの
経営する幼稚園に通っていたため、近所に友達が
いなかったのです。
でも、姉にしてみれば3つも違う私の面倒をみることで
行動範囲も狭くなるし遊びにも制限ができるしと
たまには友達だけと遊びたくなるはずです。
時折、私はおいてけぼりにされました。(笑)
いつものように庭で遊ぼうということになり、
姉たちは大人たちに危ないから行ってはいけないという
庭の奥の古井戸探検に行こうと思ったようでした。
私を連れて行くにはちょっと危ない場所です。
私がいると気になるのでと、姉たちはこっそり出かけようとしました。
小さな私はまだそのことも理解できずとにかく
置いてきぼりは嫌だと必死に追いかけましたが
追いつかず、姉たちはすでに庭の奥のほうに
行ってしまってました。
それを見て、私はその場にしゃがみこみわんわん泣いていました。
姉に聞こえるように。
だけど、なかなか姉は迎えにきてくれません。
もうひとふんばりとばかり泣いてアピールしていると
ふっと私の頭をなでる手がありました。
「よしよし!お姉ちゃんが迎えに来てくれた!
もうちょっとでつれてってくれるだろうからもう少し泣いていよう。」と
(子供は大人が思っているよりずっと策略家なのです。)
泣き続けていると、
耳元で「泣かないで。」
とささやき声が聞こえました。
その声は、姉の声とまったく違いました。
びっくりして顔を上げるとそこには。
うちで飼ってる犬が産んだ黒い子犬が
ちょこんと座って
私の顔を覗き込んでいました。
子供心にもこれはどういうことだろう???と不思議に思い、
そのクロチビに「え?今お前が言ったの??」と問いかけましたが
クロチビは私の顔をぺろぺろとなめているだけです。
そうしてるうちに姉たちが戻ってきてくれました。
「さっきクロチビがしゃべった。」と言ってももちろん
姉たちは「そんなことあるわけないやん。」と大笑いしてるだけです。
それから毎日幼稚園から
帰ってくるとクロチビに話しかけていましたが
いつもきょとんと丸い目をして首をかしげていました。
そして、ある日私が帰ってくると
クロチビは貰い手が見つかったということで
どこかにいってしまっていました。
クロチビ、幸せになったかなぁ。