圭介は絵里が住んでいた2階の部屋を眺めていた。
圭介が絵里と知り合ったのはあまり人に言えるような状況ではなかった。
4年ほど前、仕事が上手くいってなかった圭介は仕事をさぼってファッションヘルス店に行った時の相手だった。
その容姿とサービスに圭介はすっかり虜になって、以来何度も通っていた。半年位過ぎた頃からは外で会うようになったが、絵里のことを真剣に考えていた圭介は、何度か仕事を辞める事を話したが、絵里は別に一人で暮らしている母親の生活費もあるからと、なかなか辞めなかった。
しかし、1年半程前に客のストーカー被害を受けた事がきっかけで店を辞めた。
その後圭介は時々生活用品や食料品を買ったり、お金も援助していた。もちろん、絵里には自分の気持ちを伝えてはいたし、それが少しでも絵里の心を自分に向けてもらえるならと考えていた。
そんな中、絵里は友人の紹介でゆふぁで働くようになった。
絵里からたびたび来て欲しいと誘われたり、同伴したりしていた。
そして半年前絵里は突然辞めた。
1ヶ月程はメールのやりとりもあったが、突然メールが届かなくなった。
圭介はお金の事などはどうでも良かった。他人にはそんなところで働いていた女なんかダメだと言われる事はわかっていたから、誰にも話したことはなかった。
アパートを引っ越した後は、連絡を取りようも無く諦めていた。
結婚したことは絵里とメールが繋がらなくなった後一度だけゆふぁに行った際に聞いた。
その時、もともと絵里とは友人だった由衣から結婚したが相手は知らない事。自分も連絡が取れなくなったと聞いていた。
あれこれ思い出しながら、圭介は…
「俺は彼女にとって都合の良い人間だったんだろうな…。ヘルスで働いていた事を知っているのも都合悪いだろうし…。」
その時後ろから靴音がした。それこそ痴漢に間違えられたら大変だと、圭介は歩き出した。
「織田さん…?」
その靴音の方から聞こえた自分を呼ぶ声に、圭介の思考回路が一瞬止まった。