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今ではすっかり忘れられたかのような首相の「ぶら下がり取材」。私は以前から、国家のトップが立ち話のような取材に答えることには大反対だった。首相の言葉は世界に発信されるだけに、丁寧な説明もできない「ぶら下がり」取材は、受けるべきではない。

 安倍晋三首相はこの1年、私邸暮らしを続けている。私は積極的に支持するわけではないが、致し方ないと思う。首相という立場は、どんな精神的、肉体的辛苦にも耐えなければならない。心身の健康が保たれる環境を、できる限りつくる努力や工夫はしてもいい。

 月1回ペースで行っている積極的外遊も、心身ともに健康が保たれてこそできる。日本の首相として初めて、ASEAN(東南アジア諸国連合)全10カ国の訪問を達成するなど、「アジア重視」と思われる外交は、それなりの成果を上げているのではないか。

 しかし、もう少し視野を広げてみると、世界における日本の存在感は、かつての勢いはない。

 私は今年夏、米ロサンゼルスを20年ぶりに訪れて愕然(がくぜん)とした。かつて留学していた大学には、世界十数カ国の提携留学先が示されていたが、アジアでは日本をスルーし、中国・上海だった。留学当時、この大学は日本校開校の準備もしていたほど日本への関心が高かった。それが今や、留学先にも選ばれなくなったのだ。

 以前は通り1本だったコリアンタウンは拡張を続け、幹線道路の両脇にはハングルの看板が続いていた。尖閣諸島や竹島の問題などから、現地に住む日本人も、中華料理や韓国料理のお店にいかなくなったという。お互い外国人である日中韓の関係は、自国で考えるよりシビアだという。

 米国への日本人留学生は、2010年で2万1290人で、留学先としては最多だが、前年から14・3%も減少している。英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏は軒並み減少しており、代わって、中国、韓国、台湾が増加している。時代の流れとも思うが、日本人留学生の総数は04年の8万2945人をピークに減少し続け、10年は5万8060人になっている。

 安倍政権は「留学生30万人計画」として、現在14万人弱の海外からの留学生を倍増させる無謀とも思える目標を掲げるが、単に日本へ来てもらえ、日本を理解してもらうだけでは、世界での存在感は高められない。

 日本から海外留学に出ていく若者を増やし、世界に目を向け、広い視野を持った日本人を育てることで、日本という国も“成長”していく。日本人が世界各地に出て初めて、本当の意味での「友好」が築かれると思う。

 それには、外国人留学生受け入れの294億円という予算に対し、日本人留学者の予算がわずか36億円(2013年度)というギャップをなくすことが重要である。