今回紹介する作品は
1961年(昭和36年)ニュー東映
「万年太郎と姐御社員」
小林恒夫監督

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あらすじ
大昭和産業の万年太郎(高倉健)は、正義感が強すぎて東京本社で課長と大喧嘩、大阪支店で支店長を殴ったことから北海道支店へ転勤となった。
しかし北海道支店でもトラブル続出です。

源氏鶏太さん原作・高倉健さん主演の「太郎シリーズ」の最終作です。

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万年太郎(高倉健)
源氏鶏太さん原作ですので、同じキャラの石原裕次郎さんとどうしても見比べてしまいますが、健さんの方が圧倒的に喧嘩っ早く、こちらの方が観ていてスッキリしますね。

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室蘭本線虻田(あぶた)駅(現・洞爺駅)に到着したC51形蒸気機関車牽引急行「すずらん」

洞爺駅には3年前に行きましたが、この映画と全然雰囲気が違いました。

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健さんが駅弁を買ったら、毛蟹だけ入っていたので「こんなもん喰えるかよ」と悪態をつきますが、ふと気づくとアイヌの人たちに囲まれていて、気まずい思いの健さん(笑)

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板橋ゆみ子(星輝美)
万年太郎と同じ大昭和産業・北海道支店の事務員で、同じ列車に乗り合わせていました。

前にも書きましたが、輝美さんは新東宝倒産前から東映移籍の話が進められていて、移籍後いきなり健さんの相手役に抜擢されたわけです。

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万年太郎の武勇伝を知っている輝美さんは、もし喧嘩したら「私の家来になるのよ」と約束させます。

健さんと指切りする輝美さん。
健さんのただの相手役だけでなく、凄いキャラを任された輝美さん。

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北海道支店営業課長の林田(大村文武)
支店長(十朱久雄)を差し置いて会社を牛耳ってますが、とんでもなく嫌味な奴です。
林田の態度に我慢ならない健さんは、着任早々ぶん殴ってしまい、「こんな会社辞めてやる」と言って出て行ってしまいました。

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輝美さんは早速健さんの所に行って、「あんたとうとう喧嘩したわね、約束どおりあたしの子分になるのよ」と持っていたジュースで親分子分の固めの盃です「じゃあ命令します。すぐに会社に行って、支店長に詫びを入れてきなさい」健さん「えーっ、そんなことできないよ」「あら子分のくせに何よ」
ということで、健さんは輝美さんを親分として崇めなければならなくなりました。
ま、実際はそうでもないのですが。

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浅井又兵衛(伊藤雄之助)
北海道支社の方針に反対ばかりしているので、いい年になっても平社員のままです。
健さんと共闘することになりますが、ご覧の通り飲んだくれでもあります。

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林田課長が命令した癒着企業との取引でまた喧嘩してしまった健さんは、クレードル興農のアスパラガスを扱ったほうが、儲けもデカイと言って強引に取引に行きます。
洞爺湖畔で社長(三島雅夫)の趣味の狩猟に付き合う健さん。

社長は健さんの人間性は評価しましたが、リベートを条件に契約を迫る企業と取引したら私が笑われると言って、取引を断りました。
大昭和産業北海道支社の評判は、すっかり地に落ちていたのです。

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大田黒老人(月形龍之介)
健さんらと偶然知り合いましたが、実は大昭和産業の会長だった。
しかし、時代錯誤的な発言が多く、健さんはすっかりキ○ガイ爺さんだと思っていました。

強引に輝美さんの横に座る月形龍之介さんにムッとする輝美さん。

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大田黒久子(小林裕子)
月形龍之介さんの孫娘で、輝美さんのライバルになります。

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バーのマダム・アナスターシア(ナンシー・ブローク)
この人も輝美さんのライバル。

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アイヌ娘役に山東昭子さん。

クレードル興農に取引を断られ、健さんと輝美さんは帰る足もないので、アイヌの人の漁師小屋に忍び込み、船を無断借用しようとした時、手斧を持って襲って来ました。
健さんはとっさに山東さんにキスして黙らせました。
それを見た輝美さんはプンプン怒ります。

この場面で問題シーンが多くあるのですが、それは「あとがき」で書きます。

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大昭和産業と日の出水産の契約締結パーティが、ホテルを借りて賑々しく行われています。
しかし、これを仕掛けたのは腹黒い二人だった。
大昭和産業営業課長の林田(大村文武)と日の出水産常務の石辺(上田吉二郎)

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月形龍之介さんが出演しているで、余興に「水戸黄門漫遊記」の出し物が。
助さんが伊藤雄之助さんで、格さんが健さん。

ここで腹黒い二人の悪事をバラし、月形黄門様の鶴の一声で一件落着。

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一件落着して、月形龍之介さんが健さんに、孫娘の婿にならんかと言います。
健さんは「せっかくですがお断りします。ぼくには札幌に来る前に、これと決めた恋人があるんです」と言って断ります。

それを聞いてショックの輝美さん。
このシーンの輝美さんは衣装も含めて、かなり大人っぽいです。
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輝美さんは屋上まで駆け上がりました(札幌テレビ塔でのロケ)
追った健さんは、「キミに会ったの札幌に着く前だったじゃないか」と言って写真の後しっかりと抱き合いハッピーエンド。


あとがき
「万年太郎と姐御社員」は北海道の話なので、札幌だけでなく釧路や阿寒湖・洞爺湖などのロケで観光映画としても見れますし、ストーリーも面白いです。
しかし、「奴らね、きっと密漁に出かけたんですよ」とか「アイヌ娘なんかと不潔ね」とかアイヌ人を見下した台詞もあるのが残念です。

ご覧の様に画質がイマイチなので、HD画質で放送して欲しいのですが、高倉健さんの追悼でも放送されませんでした。
もしかしたら、アイヌ人に対する台詞が問題なのかもしれません。


そして東映移籍初作品になった輝美さんですが、いきなり健さんの相手役で、しかも健さんの親分役、そして健さんと結ばれハッピーエンドと、東映はこれ以上ない扱いで迎えてくれました。

輝美さんの健さん評は、「健さんはイメージ通り女優とはほとんど話しをしませんでした」で、仕事だけの付き合いで終わったそうですが、意外だったのは、怖そうな月形龍之介さんが意外や気さくで本当のお爺ちゃんのように肩もみなどをしました。と言ってます。

後、撮影が元新東宝の岡戸嘉外さんだったのも、輝美さんには心強かったでしょう。

この様に順風満帆で東映女優をスタートした輝美さんでしたが・・・