今回から新東宝のオムニバス映画「恋愛ズバリ講座」を3回に分けて紹介します。
「恋愛ズバリ講座」は大蔵社長退陣後、心機一転で俳優・スタッフがノーギャラで制作した、実験的内容の作品であります。

先ずは第一話「吝嗇」(けちんぼ)から
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1961年(昭和36年)新東宝
「恋愛ズバリ講座」 第一話「吝嗇」
三輪彰監督
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あらすじ
リッチマン社の富田社長(天知茂)は、女好きだが大変なケチンボで、せっせと通うバーの支払いもしません。
ある時、講習会で出会った女社長(小畑絹子)を見初めてしまう。

出演者が早口のロボット口調で、感情もほとんど表さない、「恋愛ズバリ講座」の中で最も実験的な作品です。
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富田社長(天知茂)
「ギブ・アンド・テイク 巻かぬ種は生えぬ」が口癖
女遊びは好きだが、その費用は会社会計で処理するか部下に払わせるケチぶりです。
女社長を好きになってからは、愛情だけでなく会社まで自分の物にしようとします。

この作品特有の早口のロボット口調もありますが、天知さんのコメディアンぶりは絶品です。

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大富産業社長(小畑絹子)
こちらは「テイク・アンド・テイク 取る!そして取る!」が口癖
ケチどころか、何一つ与えないで利益を得ようとする徹底ぶりです。
そして、天知さんが自分の事を好きなのを知ると、天知さん同様会社まで自分の物にしようとします。
まさに狐と狸の化かし合いです。

天知さんのコメディアンぶりは絶品でしたが、絹子さんも同等以上の上手さでした。

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ある日リッチマン社に突然女の子がやって来ました。

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バーの女給タカコ(星輝美)
輝美さんは他の方とは違って、ほぼ普通の口調です。
しかし、「お金さえあれば生きていける」と非常にドライな性格で、言い寄るケチンボの天知さんを上回る手腕で金品を巻き上げます。
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バーのシーン
奥に居るのがマダム役の左京未知子さんで、手前がホステス役の宮田文子さん

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絹子社長の秘書は松原緑郎さん

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松原さんは絹子社長の夜の秘書も兼任しております(笑)

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リッチマン社の総務部長(九重京司)と会計係(御木本伸介)
いつもけちんぼ社長の尻ぬぐいをして、苦労が絶えません。
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天知さんは「まがい物の宝石」をプレゼントし、絹子さんの気を引こうとしますが、中々進展しません。

そして突然輝美さんが現れ、「社長の主義はケチンボ哲学」体を提供しても何もくれないの。
だから私のようにずうずうしくやるのよ。与えたらそれ以上要求する。と言い出す。

実は輝美さんの作戦でした。
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絹子さんに「女性に対してケチな人は嫌い」と言われた天知さんは、誠意を見せるため500万の小切手を絹子さんの秘書に渡しましたが、実は輝美さんと松原さんは詐欺コンビで、まんまと500万円を持ち逃げしました。

にんまりする輝美さんと松原さん

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騙された二人はロボット口調で口論しますが、その後二人がどうなったかは分かりません(笑)


あとがき
三作からなるオムニバス映画ですが「恋愛ズバリ講座」自体75分しかなく、「吝嗇」に至っては僅か22分と、30分ドラマより短い映画でした。
天知さんと絹子さんのコメディアンぶりが見どころの作品ですが、輝美さんの小悪魔ぶりも絶品です。
三輪彰監督は輝美さんのお気に入りの監督だったそうですが、これが最初で最後の出演作品になりました。

輝美さんは1996年にインタビューを受け、女優時代にあまり思い出はないと言ってますが、「これは観たいわ。完成したのを観てないの。」と語っています。その後CSで放送されたりDVD化されたので、おそらく観られた事でしょう。

「吝嗇」を観られた感想を含めて、もう一度インタビューを受けて欲しいのですがね。

もう一つ
「吝嗇」の劇中で使われたBGMが、翌年松竹で公開された「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」のメインBGMで使われています。
作曲は同じ渡辺宙明さんなのですが、まさか他社の作品のメインBGMで使うとは・・・
世間的に「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」の方が圧倒的に有名なんですが、「恋愛ズバリ講座」のほうがオリジナルだと言うことを伝えておきます(笑)