今回紹介する作品は
1960年(昭和35年)新東宝
「女と命をかけてブッ飛ばせ」
曲谷守平監督



あらすじ
猪突猛進のスピード狂である松崎一夫(宇津井健)は、東朝新聞の記事輸送員。
特ダネ記事をバイクで新聞社に送るのが仕事だが、仕事の為ならスピード違反はへっちゃらで、その事で編集部といつも口論していた。
ある日、同僚が事故を起こし会社から首になったのに腹を立て、部長(九重京司)と大口論の末会社を辞めてしまう。

新東宝末期のプログラムピクチャーですが、「女と命をかけてブッ飛ばせ」のネーミングが非常にストレートですね(笑)
特に曲谷守平監督は、こういうネーミングの作品を多く撮っています。



松崎一夫(宇津井健)
「ブッ飛ばし」だけが俺の生きがいと公言するスピード狂。
新聞社を辞めた後、スカウトされていたモーターボート乗りになります。
自説を曲げない、猪突猛進型は宇津井さんにピッタリですが、バイク乗りやモーターボート乗りに向いているとは思えません(笑)



小島絹子(星輝美)
宇津井さんの同僚(伊達正三郎)の妹だが、輝美さん、遂にこの作品で宇津井さんの相手役になります。
宇津井さんの彼女設定なので、若干大人っぽい演技です。



輝美さんは女ライダーだった!
宇津井さんは「女のカミナリだ!」言ってますが、実際はバイクシーンはスタントマンが運転。



加代子(三条魔子)
宇津井さんの同僚(国方伝)の婚約者だったが、国方さんが不慮の事故死に。

いつものツンデレではなく、大映の三条江梨子時代の様な清純派キャラでしたが、国方さん死後は、未亡人の様な暗いキャラになります。



小島嘉一(伊達正三郎)左と大前田(国方伝)
両者共、宇津井さんの同僚で友人ですが、伊達さん操縦のセスナ機が墜落して、国方さんが亡くなり、自身も負傷し新聞社を退社。
兄(若宮隆二)の経営する小島モータースで働きますが、兄も事故死してしまい、伊達さんが経営することになります。

因みに、伊達正三郎さんの「正三郎」は丹波哲郎さんから貰った名前です。
丹波さんの本名は丹波正三郎です。



亜細亜モータース社長・黒岩(芝田新)
アメリカの会社へモーターボートを受注するためには、殺人も厭わない悪徳社長です。
宇津井さんがライバル会社(小島モータース)の知り合いなのを知って、自陣営に取り込んだのは知恵者ですが、何となく抜けた所もあります。

芝田新さんは、主に中川信夫監督の作品に出演するベテラン俳優ですが、日活にもよく出演しております。
私は新東宝のベテラン俳優の中では、芝田新さんが一番好きです。



トミ(魚住純子)
亜細亜モータース社長の情婦ですが、彼女もスポーツカーを乗り回すスピード狂。
社長の命令で宇津井さんを陣営側に誘いますが、宇津井さんを好きになってしまいます。

今年亡くなった、魚住さんの代表作でもあります。



スピード狂の宇津井さん、前半は魚住さんの魅力というよりも、彼女のスポーツカーに惹かれて、輝美さんを袖にします。

輝美さんファンですが、どうみても魚住さんとの方が似合っていると思います(笑)



宇津井さんの父親役が石川冷さん。
黒岩社長は、飲んだくれの父親を利用して、小島モータースの機密を得ます。
石川冷さんは、宇津井さんの「不肖の父親」役をよく演じていますね。



中間は略しますが紆余曲折あって、宇津井さんは小島モータース陣営に入ります。
小島モータースのエンジン設計図を手に入れ、互角の立場になった亜細亜モータースですが、宇津井さんが、対立するモーターボート乗りになってしまったので、最後の手段として、輝美さんと三条さんを拉致して、宇津井さんにモーターボート競争に負けるよう強迫します。

ここが名シーン、いや迷シーン


「この顔をギタギタにされたくなかったら、レースに負けるんだ」と脅す芝田さん!
宇津井さんは「嫌だ。俺はスピードで負けるのは嫌だ!」

びっくりした輝美さんの表情!
芝田さんも、まさかの発言にびっくりして、もう一度問い直すと、宇津井さんはようやく了解します。

自分のポリシーの為なら、「自分の彼女がどうなってもいい」という面を一瞬見せた宇津井健!



亜細亜モータースの木村(泉田洋志)
輝美さん達は魚住さんに助け出され、五分の勝負が出来ると思いきや、社長はスナイパーまで用意して勝とうとします。
すると、それまで極悪だった泉田さんはスナイパーが居ることを宇津井さんに告げ。

「松崎。これで貴様と互角の勝負ができそうだ。レースに女を賭けるか」
「俺が勝ったら絹子はもらう。お前が勝ったら好きにするさ」と言います
すると宇津井さんは「勝手なことをぬかすな」と拒否しますが。
泉田さんは「スピード競争に自信があるなら、堂々と絹子を賭けてみろ」と宇津井さんの痛い所をつきます。
案の定「ようし。貴様も俺もスピードに命を賭けた男だ。女を賭けてぶっ飛ばそう」

何だか凄い展開になって来ましたが、映画タイトル「女と命をかけてブッ飛ばせ」はここから来ているのです。
「女」は当然輝美さんです。



モーターボートを操縦する宇津井さん
「小島モータース」のネーム入りヘルメットが、なんか微笑ましいです(笑)



宇津井さんを声援する輝美さん



輝美さんと三条さん
輝美さんの方が二歳年上ですが、特に今回は三条さんの方が年上に見えました。

当時の二人は仲良しで、グループ交際をよくやっていたそうです。
(輝美さんは菅原文太さんと、三条さんは小林悟監督と)



焦った社長がスナイパーからライフルを奪い、撃ちまくるが、誤って泉田さんを撃ってしまい、ボートは二人に向かって突進!爆発してしまいました。

勝った宇津井さんを祝福する輝美さん。



すると、宇津井さんは魚住さんからスポーツカーを借り、輝美さんに「僕は今までスピードに命を賭けた。だがこれからは君に命を賭ける」と言いました。

あの宇津井さんからここまで言わせた輝美さんは凄いです(笑)


あとがき
もう皆さん分かってると思いますが、ツッコミどころが満載です。
ストーリーも滅茶苦茶過ぎる所が多々ありますが、それでも面白い!
新東宝の良さが全面に出た作品と思います。

音楽が三保敬太郎さんで、彼の明るいジャズも作品に花を添えてくれていますね。